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メディアによって拡散される市街劇「香港」の切り取られかた

ニューズウィーク日本版 / 2019年9月6日 17時0分

人民日報によるSNS投稿「彼(=警察官)の『レンズ』だけが暴徒を捉えている」。メディアが「起こっている事」より「自分が撮りたいもの」に群がる様子を皮肉っている。しかし視点をずらすと、この警察官の前にデモ隊がいるかどうかもまた、定かではない

読者・視聴者は彼らが撮った迫真の写真や動画を見る事になるが、その中にはメディアの姿は映り込まない。しかしその光景を現場で一歩離れた所から見ると、これらは記者によって十重二十重に囲まれた場所で演じられるパフォーマンスにも見えてくる。デモ隊も警官隊もそれぞれに真面目に役割をこなしている事は疑いようもないが、その真面目さは「役者が真面目に役を演じている」のと同じ種類だ、と言ったら怒られてしまうのかもしれないが。

我々は切り取られた「ニュース」をどう受け止めるべきか

そもそも現実は非常に多面的で流動的だ。また、こうした大きな出来事は、たとえ現場にいたとしても、立つ場所と時間、向いている方向で見える景色はまったく違うものに成り得る。そしてそこにいなければなおさら、実際に何が起こったかを知る事は難しい。個人が気軽に情報発信できるようになった事には素晴らしい面がある事は確かだが、同時に雑多な情報が増える事もまた事実だ。

加えてこうした政治に関わる問題においては、流される情報は自らの立場に沿った強いフレーミングとバイアスがかかり、場合によってはそこに完全なるフェイクニュースも混ざってくる。そうした情報に曝される状況で、大きな興味も基礎知識もない事柄に対して正しい選球眼をもつ事は難しく、大多数の普通の人々にとって現実的でもない。しかしこの記事も含めて、自分たちの元に届けられる「ニュース」「つぶやき」の多くが誰かの意図や願望の元に味付けされ、発信されているという事には今まで以上に注意を払ってもいいのだろうと思う。

9月4日夕刻、元々の発端であった逃亡犯条例の法案が撤回にむけ正式に動き出した。6月9日から2000時間以上にわたって上演され続ける市街劇にはこの先、どのような展開が用意されているのだろう。

[筆者]
林毅
ライター・研究者
広義のジャーナリズムやプロパガンダをテーマに研究を行う。
Twitter -> @Linyi_China
Blog -> 辺境通信



※9月10日号(9月3日発売)は、「プーチン2020」特集。領土問題で日本をあしらうプーチン。来年に迫った米大統領選にも「アジトプロップ」作戦を仕掛けようとしている。「プーチン永久政権」の次なる標的と世界戦略は? プーチンvs.アメリカの最前線を追う。



林毅


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