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「一帯一路」香港サミット2019は香港で挙行された

ニューズウィーク日本版 / 2019年9月13日 13時35分

中国大陸メディアはどう伝えたか

サミット第一目が、香港市民からの大きな抗議を受けずに一応「無事に」終わったのを確かめると、

「9月12日 00:50」になって、ようやく中国大陸のメディアである「深セン広播電影電視(ラジオ・映画・テレビ)集団」が<香港の一日 時は待ってくれない「2019年9月11日」>という見出しで、まちがいなく「一帯一路」香港サミット2019が開催されたことを知らせた。

しかし参加人数も会場(参加者側)の写真も掲載することなく、他の情報を織り交ぜて薄めながら、最後に林鄭月娥氏が辛うじて面目を保ったスピーチ写真を載せているだけだ。

その実態を知ることは、今後もあまり出来ないだろうが、このたび白井氏の俊敏な行動が、この歴史的瞬間の真相を余すところなく知らしめてくれた。

9月4日の逃亡犯条例改正案撤廃に関する宣言は、この瞬間の成功を林鄭月娥氏にもたらすために行われたものだ。

この日を何とかつつがなくやり過ごすために、9月4日になって、ようやく「撤廃」を宣言したのである。その前に香港警察の力で「何とかしろ」と全人代常務委員会から絶対的命令を受けていたのだが、デモは激しくなるばかりだった。だからサミット開催の1週間前に撤廃を宣言せざるを得ないところに追い込まれたということだ。

習近平政権側は、絶対に武力を行使することはできない。

なぜならトランプ政権が睨みを利かしていて、万一にも中国が武力行使をすれば、それを機に天安門事件の時と同じように一気に西側諸国と連携して対中封鎖網を形成することができる。ここは民主主義的価値観がものを言う。

トランプ政権はそれを待っていることを習近平政権は知り尽くしているので、今回は絶対に武力行使をすることはしないと、中国は最初から決めていた。

なお、9月11日に「中国統一戦線新聞網」が中国共産党機関「人民日報」の情報として<香港は一帯一路プロジェクトの結合を強化する>という見出しの報道をしているが、これはあくまでも9月10日に行われた香港中華総商会と中国対外請負工程商会が提携して成立させた「工商専業委員会」第一回理事会の模様を報道しているだけで、11日の「一帯一路」香港サミット2019に関しては一言も触れていない。

香港では何が起きるか予測できないので、北京政府側は怖くて、事前報道や生中継などは絶対にできないのである。その証拠を確認する意味では興味深い。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

[執筆者]遠藤 誉
中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』、『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『チャイナ・ジャッジ 毛沢東になれなかった男』、『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。


遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)


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