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コロナは「地方」と地域文化に影響を与えた...サントリー地域文化賞選考委員座談会(下)

ニューズウィーク日本版 / 2023年9月20日 10時44分

政府統計も使い方によってはさまざまなことが見えてくる recep-bg/iStock.

<サントリー文化財団の「サントリー地域文化賞」選考委員を約20年務めた、佐々木幹郎、田中優子、藤森照信の三氏に同じく選考委員を務める御厨貴が聞く。下編は、自然災害を経て見直された地方自治と地域の人々の力について。『アステイオン』98号より「面白ければこそ! 地域文化賞の味わいを楽しんだ20年」を転載> 

※第2回:東京には本当に「地域」がないのか?...サントリー地域文化賞選考委員座談会(中)から続く

東日本大震災・新型コロナ感染症を経て「地域」を見直す

御厨 2011年に東日本大震災が起きたときも、推薦はなかなか大変でした。特別賞を出しましたね(※7)。

佐々木 3.11のような大きな災害や、地域全体が壊滅するような大きな問題が起こったとき、この賞の威力は出ると思います。

地域文化が途絶えることがどれだけ恐ろしいことか。それを復活させようとする動き、あるいは復活のさせ方に新しいアイデアを込めている動きを励ます意味で、あの特別賞はとてもよかったですね。

御厨 震災前に「地域文化賞」を出した福島を含めた東北の地域に、震災後、事務局から連絡をしました。「もうとてもお祭りなんかできません」と言うのを「何とか頑張ってください」と。

その後、「今年は駄目だけど、来年はやれそうです」とか「3年目にできた」という話にもなりました。かつて「地域文化賞」を出したから関係が生まれ、しかもアフターをずっとやっていたから震災の際にも声掛けができた。「地域文化賞」の陰徳です。

もう1つ、地域文化にいろんな影響を与えたのはコロナです。悪いこともあったけれども、3年間のコロナ禍を経て今見えてきた面白さを政治や行政の側から言うと、地域が見えてきたということ。

「外に出てはいけません。地域の中にいなさい」と強制されて、「ここでどうやって生活していくか」と皆が考えるようになった。

自分たちで自分たちを守るためには地域が大事だ。地域の行政に関心を持たざるを得ないわけです。それまでは接点のなかった役所に連絡をする。役所のほうもみんなをつかまえる運動を始める。

地域の人の声を一番よく聞いているのは町長であり市長であり、知事です。コロナ禍で地方自治は見直されています。権限が移譲されて地方が頑張れば、それはもちろん地域文化と関係してくるでしょう。

地域文化はこれまで、政治や行政と縁のないところでやっているからこその地域文化だったけれど、これからはそういうものと一体となる地域文化が地域を支える礎になるかもしれない。

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