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世界一幸福な国はSDGsでも達成度1位 フィンランド、気候変動対策へ行政の取り組みは?

ニューズウィーク日本版 / 2023年10月5日 12時0分

チームは、太陽光や地中熱(土地表面に近いところの熱)、建物の排熱などの再生可能エネルギー設備を住居に設置するためのアドバイスを無料で行う。どの再生可能エネルギーが最適かは、条件(建物や地域の状況、資金)によって変わってくる。設置には補助金が支給される。投資額は、だいたいの場合10年~15年で元が取れるそうだ。

チームのメンバー、エンマ・ベルグ(サービス・デザイナー兼エネルギー専門家)さんによると、地中熱発電の人気はうなぎ上りだという。これまでに600の住民協会(アパートやマンションの居住者たちで結成する自治会)から相談を受け付けた。一軒家所有者や住宅管理会社も相談に来る。地中熱暖房に移行したある住民協会長は、「少ない購入エネルギーで十分な暖房が得られる」と話す。

自分たちで、分譲マンションに地中熱発電を設置した居住者たち。地中熱発電の設備(10本のパイプで地下300mから温水――地中の熱をくみ上げている)も見せてもらった。地中熱発電のみの費用は30万ユーロ(約4700万円)で、3分の1は補助金でまかなった。

筆者は、市内で地中熱発電を使い始めたばかりの、築50数年の大型分譲マンションを訪問し、住民協会長と副会長にも会えた。チームに支援してもらいながら、最適な再生可能エネルギーの選択の段階から皆でじっくり検討を重ね、2021年秋に地中熱発電の導入を決定した。地中熱発電以外にも工事が必要だったため、総工費は350万ユーロ(うち地中熱発電のみの費用は30万ユーロ)となった。マンションの保有面積によって各世帯の支払い分を決めた。

「地中の熱をくみ上げるパイプが、ここに埋まっている」という表示が、マンションの随所に付いている。

このマンションの住民は、これから、地中熱発電で2年目の冬を迎える。 環境面だけではなく、(戦争の影響で)公的なエネルギーの価格上昇を心配しなくていいという点でも、建物の価値が上がって自分たちの資産になる点でも、導入したメリットは大きい。

100%自給の「自分たちのエネルギー」を実現したことに、住民の多くが非常に満足している様子がとても印象的だった。

[執筆者]
岩澤里美
スイス在住ジャーナリスト。上智大学で修士号取得(教育学)後、教育・心理系雑誌の編集に携わる。イギリスの大学院博士課程留学を経て2001年よりチューリヒ(ドイツ語圏)へ。共同通信の通信員として従事したのち、フリーランスで執筆を開始。スイスを中心にヨーロッパ各地での取材も続けている。得意分野は社会現象、ユニークな新ビジネス、文化で、執筆多数。数々のニュース系サイトほか、JAL国際線ファーストクラス機内誌『AGORA』、季刊『環境ビジネス』など雑誌にも寄稿。東京都認定のNPO 法人「在外ジャーナリスト協会(Global Press)」監事として、世界に住む日本人フリーランスジャーナリスト・ライターを支援している。www.satomi-iwasawa.com



岩澤里美(スイス在住ジャーナリスト)


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