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「中国とは付き合いきれない」傾向が強まる時代に、「中華」をどう考えるか

ニューズウィーク日本版 / 2023年10月18日 11時20分

度重なるイスラエル軍の爆撃で破壊されたガザ中心部のビル(10月13日) Saleh Salem-REUTERS

<国際秩序を再編成しようとする現代の中国を考えるには、私たち周辺国の視点も欠かせない> 

論壇誌『アステイオン』98号の特集「中華の拡散、中華の深化──「中国の夢」の歴史的展望」をテーマに行われた、阿南友亮・東北大学教授、野嶋剛・大東文化大学教授、森万佑子・東京女子大学准教授とアステイオン編集委員の岡本隆司・京都府立大学教授による座談会より。

◇ ◇ ◇

「中華」という概念

岡本 中国に住む中国の人たちと、日本列島から海を隔てて中国を見る日本人は、同じ目線では世界を見ることはできません。

そこで『アステイオン』98号では、「中華の拡散、中華の深化──「中国の夢」の歴史的展望」という特集を組みました。

朝鮮半島、対馬、琉球、台湾、香港、チベット、新疆、ベトナムなど、日本同様に違う立場にある国の中国を見る目、そして中国を考えるスタンスを問い直そうと専門家の方々にご寄稿いただきました。

まずは中国近代政治史がご専門の阿南先生に、読者として本特集についてのご感想をうかがえますでしょうか。

阿南 現在、日本が直面している対中問題は喫緊の問題だと意識されがちです。しかし、実は起源が相当古く、前近代からの延長線上にあります。その歴史的プロセスをおさえたうえで対処方法を考えるために、今回の特集は意義深いと考えます。

習近平は「中華民族の偉大な復興を達成するという夢に向かって進んでいく」と発言しています。「発展」ではなく「復興」。過去への回帰と歴史が繰り返されています。

習政権の対外姿勢は、岡本先生がご著書で書かれた清朝の乾隆帝期のものと似ていますね。周囲の国々をあたかも下位に位置する朝貢国のように扱っているようにみえます。

岡本 ご指摘のとおりで、その乾隆帝的な振る舞いやスタンスがまさに「中華」的です。

阿南 北京は「中華」という概念で中国国内だけでなく、国際秩序を再編成しようとしています。しかし、その理想とされる乾隆帝期に戻るというイメージは、独り善がりで終わる可能性があります。

現実には「求心力」ではなく、「遠心力」が働いています。韓国だけでなく、ベトナム、ウイグル、チベット、香港、台湾も、北京の掲げるメッセージに引きつけられていない実態が、今回の特集から浮かび上がってきます。

この「中国とは付き合いきれない」という傾向は、民主主義諸国だけではなく、そうではない国も含めた周辺地域でも強まっていくと予想されます。そのことを本特集は示唆しています。

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