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なぜ日本が協力? 「古代エジプト博士ちゃん」が聞く、大エジプト博物館の魅力

ニューズウィーク日本版 / 2023年10月11日 10時30分

乗り物に屋根がついた最古の例だというチャリオット(戦闘用の二輪馬車)。しかも屋根(写真右)は傘のように折り畳める仕様だ。VR技術により、来館者はスマホやタブレットの画面を通して屋根がついた状態を見られる予定

エジプトと日本の信頼関係で合同修復を実現

環子 世界にはいろんな国があるのに、どうして日本がエジプトの博物館を支援しているのですか?

松永 大変良い質問ですね。この質問には私からお答えします。1900年ごろにフランスやイタリアの協力でカイロのエジプト考古学博物館が建てられたのですが、100年経って老朽化が進み、新しい博物館を作ろうという話が持ち上がりました。そこで日本にリクエストがあったんです。

環子 エジプトから支援のリクエストがあったのですか。

松永 国際協力っていうと、アフリカなどの発展途上国の草の根に入って支援するJICA海外協力隊が挙げられるかもしれません。ほかにも、橋や発電所などのインフラを整備するなど、途上国の経済を発展させていこうとする活動がありますが、この大エジプト博物館のように、外国の文化を支援して大切な「宝物」である遺物を後世に伝える協力を行うことも、大切な国際協力の仕事の一つなんですよ。

河合 この協力の中で、72点ものツタンカーメン王の財宝をエジプト人と一緒に保存修復させてもらいました。そもそも、エジプト研究に200年の歴史をもつ欧米に対し、日本はある意味、新参者ですから、修復の分野に新たに参入すること自体、本当にすごいこと。ましてや、エジプトの重要遺物に日本人を含め外国人が触れながら修復するのは、画期的なことなんですよ。今回それが実現したのは、日本人の「エジプト人を尊重して、協力してやっていく」という姿勢が認められたのかもしれません。お互い学び合い高め合い、双方にプラスの効果があったと思います。

修復作業は、主に木材、壁画、布(染織)の3分野で、エジプト人と日本人の専門家が協力して行われた(上)高解像度デジタル顕微鏡(JICA供与機材)を用いたチャリオット細部の診断分析。同顕微鏡を用いた診断分析は、保存状態の把握だけでなく、新しい考古学的知識を得る研究にも貢献している(下左)ツタンカーメンのサンダルの修復作業(下右)壁画の診断分析

環子 エジプトと日本は良い関係にあるのですね。

松永 両国の交流は1863年にさかのぼります。日本の使節団がヨーロッパに派遣され、その途中でエジプトにも立ち寄りました。その一員には福澤諭吉も含まれていました。翌年も使節団が訪れ、ちょんまげ姿の侍たちがスフィンクスの前で記念撮影をしています。その後も交流を深め、ここ20年ほどはエジプトの文化財の保存・修復をする中で信頼関係を築いてきました。

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