イスラエル・ハマス軍事衝突へのアメリカの反応はかなりバラバラ
ニューズウィーク日本版 / 2023年10月11日 14時10分
更にバイデンは、10日火曜の午後に会見を行い、ハマスの攻撃を「邪悪なテロ」だと激しく攻撃しました。またイスラエルのネタニヤフ首相との電話会談の結果、週末の攻撃で少なくとも14人のアメリカ人が死亡したことが判明したと明かしています。更に拉致されている人質の中にアメリカ人が含まれているというショッキングな公表をしました。
困難な状況を公表したのはいいとして、バイデンは「相手のカネの凍結解除」であるにしても、イランに抑留されたアメリカ人5人に対しては、つい1カ月前に60億ドルを払っています。ですから、今回の人質を見殺しにはできないし、その一方で交渉を行う場合の「命の値段」については、アメリカ人とイスラエル人の区別をすることもできません。
そうなると、イスラエルがこうした場合に備えて勾留している多数のハマスの「テロ容疑者」との「捕虜交換」については、ネタニヤフの主導に任せるしかなくなるかもしれません。その上で、事態がうまく推移しないと、政治的にはこれも命取りになる可能性があります。
最悪なのは、本稿の時点でも夜を徹して続いているイスラエル軍による空爆と、水や食糧を含めた完全封鎖によって、ガザ地区で予想外の人道危機を起こしてしまう可能性です。バイデンはここまでイスラエルへの連帯を口にし、また自国民の死亡と人質を取られていることを明かした以上は、仮に限度を超えた事態になった場合には、連帯責任を問われる危険もあります。
では、バイデン批判を強めている共和党はイスラエル支持で団結しているのかというと、必ずしもそうではありません。強硬派がマッカーシー下院議長を引きずり降ろした後任は、まだ選出できておらず、議長なき下院はほぼ権力が停止したままで危機対応ができる態勢になっていません。今回の事件にショックを受けて、直ちに党内の統一が図られるかというと、これは分かりません。現地の10日現在、幹部による調整が延々と続いているようですが、現地時間の11日水曜に予定されている議長選挙までに調整ができるかは、まだ不透明です。
また、トランプ候補に関しては、大統領在任中にイスラエルから得た機密事項をロシアに流して、それがイランやハマスにわたっているという批判が出ています。そのトランプ本人は、9日月曜にニューハンプシャー州で行った演説では、事件を受けて、自分が当選したら「イスラム教徒の入国禁止」を行うなどという、8年前とソックリの発言をしていましたが、あまり話題になってはいません。
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