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イスラエル軍もハマス軍事部門も「直面したことがない事態」...イスラエル精鋭部隊「サエレット・マトカル」はどう動くのか?

ニューズウィーク日本版 / 2023年11月2日 14時25分

救出を難航させる情報不足

人質奪還の任務は、情報の不足によってより複雑なものとなっている。総面積約365平方キロのガザ地区の人口は約220万人。イスラエル軍の空前の攻撃を受け、地元当局によれば死者は7000人を超えている。

イスラエル国防軍の情報部門にとって、今回の作戦がガザ地区から完全に撤退した05年以降で最大の試練になることは間違いない。

地上戦の指揮官は「現地の状況について手元の知識で最善を尽くすしかない」とアミドローは言う。今回の場合は「人質の居場所が分からないし、作戦計画でそれを計算に入れてもいない」。

イスラエル軍もハマスの軍事部門も「このような事態に直面したことはない」と、元国防軍情報部パレスチナ問題担当部長のマイケル・ミルシテインは本誌に語った。

「ハマスに関しては人質の全員、もしくは大半がトンネルの中にいると私はみている」と、彼は言う。「ハマスはガザ地区の地下に、非常に強固で複雑なトンネル網を築いている。ハマスの指導者とメンバーの大半は今もそこにいるはずだ」

イスラエルは以前にも、ガザで人質事件の危機に直面したことがある。06年にイスラエル国防軍の兵士ギルアド・シャリットは、越境偵察の途中でパレスチナの戦闘員に拉致された。

救出は行われず、彼は5年以上ガザで拘束された後、1000人以上のパレスチナ人受刑者と引き換えに解放された。

かつてサエレットを指揮したアビタルは、あのとき兵士の救出を試みなかったのは拘束状況の詳細について「われわれに何の手掛かりもなかった」ためで、ハマスやその他の勢力は「情報が外に漏れないように厳しく管理していた」と語る。

では今回、サエレットはどのような結果を出せば「勝利」といえるのだろう? 

アビタルの見立てでは、「人質の過半数」を救出できれば「上出来」だ。

アビタル自身も、サエレットの1人として絶望的な状況で何度も成功を収めてきた。1994年には、その数年前にイスラエル人パイロットが拉致された事件への報復として、レバノンのシーア派政党アマル運動の幹部ムスタファ・ディラニを自宅から拉致するという劇的な作戦の指揮を執っている。

夜間にヘリコプターでレバノンのベカー高原に侵入し、当地の武装勢力ヒズボラやシリア軍の警戒の目をかいくぐってディラニを拉致した。

親族との銃撃戦でサエレット隊員1人が軽傷を負ったが、敵との大きな軍事衝突に至ることはなく、作戦は大成功だったとされる。

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