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イスラエル軍もハマス軍事部門も「直面したことがない事態」...イスラエル精鋭部隊「サエレット・マトカル」はどう動くのか?

ニューズウィーク日本版 / 2023年11月2日 14時25分

アビタルによれば、自身の指揮下でこうした作戦が行われる際は首相だったイツハク・ラビンと「密な連絡」を常に保っていた。ちなみにラビン自身はその1年後、パレスチナ人との和平合意に反対するイスラエルの極右民族主義者に暗殺された。

もちろん現在のネタニヤフも、ガザ侵攻作戦のあらゆる側面を統括する責任者として中心的な役割を果たすことになる。アビタルの言葉を借りれば、「この種の作戦が失敗すれば代償は大きく、軍隊だけでなく政治の責任が問われる」からだ。

しかしアミドローが述べたように、作戦の詳細を詰めるのは現場の指揮官の役目だ。アビタルに言わせると、「指揮官は自分の計画が承認されるよう、首相や国防相にうまく売り込む必要がある」。

ちなみにベカー高原への急襲も、首相の要望で実行を1日ずらしたそうだ。

あの国の意思を最終的に決める人たちに近い筋なら誰もが知っているはずだが、ガザ地区への大規模な軍事侵攻はもはや避け難い。

05年にガザから撤退して以来、イスラエル軍はあのパレスチナ人の土地で少なくとも3度の地上戦を経験している。だが今回は首相自身が、軍事組織としてのハマスの「壊滅」を目指すと公言している。そうであれば、今までとは次元の異なる戦闘になるのは目に見えている。

ちなみに国軍の報道官リヒャルト・ヘクトは、サエレットが出動する可能性についてコメントを控え、人質の奪還は「諜報機関と政府指導部の最も機密性の高い部分が扱う事項であり、それ以上のことは私には言えない」と述べている。

人質全員の解放は困難

難攻不落のはずだった壁の向こうに潜むパレスチナの戦闘員も覚悟を決め、備えを固めている。ハマスの広報官バッサム・ナイームは本誌に「総力を挙げて人民を守る準備」をしていると語り、「簡単にはガザ地区に入らせない。こちらもあらゆる手段で抵抗する」とした。

それでも、かつてサエレットの司令官を務め、政府の要職を歴任してきた元首相のバラクは信じている。今も水面下のどこかで外国の政府(エジプトやドイツ、カタール、スイス、そしてアメリカなど)がハマスの政治部門と連絡を取り、多くの外国人を含む人質の解放に向けて努力しているはずだと。

実際、ハマスが10月20日にアメリカ人のジュディス・ラーナンと娘のナタリーを解放した背景にはカタール政府の働きかけがあったとされる。

ただし人質全員の解放は困難だとバラクは考える。「この問題で決定を下すのは、ハマスの政治部門ではなく軍事部門の指導者だろう。

だが彼らもガザ地区の北部から南部に退避している可能性が高い。身を守るためだ。もう北部には実戦部隊しか残っていないだろう」

過去にサエレットが実行した作戦に比べて、今回の状況は格段に複雑であり、最終的な決断はファクトとデータを握っている人間が下すしかないとバラクは言う。「つまり、彼らを信じるしかない」のだと。

そして「私の直感だがね」と前置きして、こう言った。

「この手の議論を深掘りするのは禁物だ。私らに、そんな資格はない」

地球上で最も精鋭のイスラエル特殊部隊「サエレット・マトカル」とは?

Sayeret Matkal |Earth's most elite special forces?/Agilite

    

トム・オコナー、デービッド・ブレナン(いずれも本誌記者)


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