イスラエル閣僚「ガザに原爆投下」を示唆──強硬発言の裏にある「入植者の孤立感」
ニューズウィーク日本版 / 2023年11月7日 16時10分
<原爆投下を「一つの選択肢」と述べたアミサイ・エリヤフ遺産大臣の思想性を、出自から紐解く>
・イスラエルの閣僚が「ガザに原爆を投下する選択肢」に言及し、閣議出席を禁止された。
・この攻撃的発言は「個人の失言」というより、「祝福も理解もされない」孤立感を深めるイスラエル入植者の声を代弁したものといえる。
・その一方で、「原爆投下」発言は周辺国のイスラエル批判をエスカレートさせており、その影響はグローバルなものになりつつある。
イスラエルの閣僚が「原爆使用」に言及したことで、ガザをめぐる対立と緊張はさらにエスカレートした。
「核保有国」イスラエル
イスラエル政府で聖地エルサレムの文化財保護などを担当するアミサイ・エリヤフ遺産大臣11月3日、ローカルラジオ局のインタビューで「全員を殺すためにガザに'ある種の原子爆弾'を投下することはあるか」と問われ「一つの選択肢だ」と応じた。
イスラエルは冷戦時代から核開発疑惑を持たれてきたが、歴代政権は保有を肯定も否定もしてこなかった。はっきりさせないことが、かえって敵対勢力に対する抑止効果になってきたともいえる。
保有の真偽はさておき、「パレスチナ人全員の抹消」とも取れるこの発言が拒絶反応を招いたことは不思議でない。
発言が明らかになるや、ネタニヤフ首相はエリヤフ大臣の閣議出席を禁じた。ネタニヤフはこの発言が「現実とかけ離れている」「イスラエル軍は民間人の犠牲を出さないよう国際法に則って行動している」と火消しに努めた。
その後、エリヤフはSNSで「'原爆投下'は一つの比喩だった」と述べ、イスラエルの核保有を認めたわけでないとも釈明した。
強硬発言の裏にある孤立感
エリヤフの思想性を一言でいえばウルトラナショナリスト、極右である。これまでにも、国連決議に反する「全パレスチナの併合」を主張するなど、ユダヤ教保守派の多いネタニヤフ政権の閣僚のなかでもとりわけタカ派的言動が目立つ。
その思想性は出自にも関係している。
エリヤフは1979年、ヨルダン川西岸のエルサレム近郊に生まれた。父親は高位のラビ(ユダヤ教聖職者)である。
エリヤフの生まれ育ったヨルダン川西岸は1947年の国連決議でパレスチナ人に割り当てられた土地だが、1967年の第三次中東戦争でイスラエルによって占領され、現在に至る。
占領地に生まれ育った入植者は、最大都市テルアビブなどに暮らすそれ以外のイスラエル市民と比べて、ヨルダン川西岸の占領に固執しやすく、パレスチナ人国家との共存に反対する傾向が強い。パレスチナとの和解は、彼らの存立基盤を失わせかねないからだ。
この記事に関連するニュース
-
イスラエル、西岸で12.7平方キロ「国有地化」 過去30年で最大の土地接収
AFPBB News / 2024年7月4日 13時2分
-
西岸入植地「合法化」を承認 イスラエルで違法の5カ所
共同通信 / 2024年6月30日 20時56分
-
イスラエル・ガザ侵攻に次なる展開、ヒズボラとレバノン国境地帯で「全面戦争」が開始か?
ニューズウィーク日本版 / 2024年6月26日 14時28分
-
米国、イスラエル組織に制裁へ ガザ人道支援のトラック襲撃
ロイター / 2024年6月14日 14時54分
-
ヨルダン川西岸のパレスチナ人死者500人、国連がイスラエル非難
ロイター / 2024年6月5日 13時47分
ランキング
-
1ハリス副大統領が最有力候補、バイデン氏選挙戦から撤退なら=関係筋
ロイター / 2024年7月4日 0時8分
-
2ニシキヘビが女性丸のみ、腹から遺体発見 インドネシア
AFPBB News / 2024年7月3日 17時59分
-
3英総選挙きょう投開票、「穏健」労働党が大勝見込み…スターマー党首が左派色改め現実路線へ回帰
読売新聞 / 2024年7月4日 9時46分
-
4「敵前逃亡」で兵士25人に死刑 コンゴ軍事法廷
AFPBB News / 2024年7月4日 13時59分
-
5イスラエル、西岸で12.7平方キロ「国有地化」 過去30年で最大の土地接収
AFPBB News / 2024年7月4日 13時2分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)