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なぜ「経営理念」だけでは稼げないのか?...仕事は「中間システム」の具体化がカギだった

ニューズウィーク日本版 / 2023年11月11日 9時22分

売上が大切か、信頼が大切か。その判断はケースバイケースだが、経営理念に「私たちは、お客様との信頼関係を大切にします」とあれば、やはり信頼が大切だ。営業方針を作るにしろ、人事評価制度を作るにしろ、お客様との信頼関係をベースに考える必要があることが分かる。(図4)

図4 『仕事ができる 具体と抽象が、ビジネス10割解決する。』 149頁

経営理念の実現とは中間システムの「具体化」

逆に言えば、経営理念とは、中間システムに具体化しない限り実現されない。「お客様との信頼関係を大切にします」という経営理念は、「営業方針」「ブランド戦略」「人事評価制度」などに具体化されて初めて実現される。

結局のところ、経営理念が必要な理由は「社員の意識を統一するため」というような抽象的なものではない。「経営理念なしでは、営業方針もブランド戦略も人事制度も作れない」という非常に実用的な理由なのだ。

経営理念はまた、中間システムに安定性を与える。もしも何かしら中間システムが不明瞭になったとき、あるいは機能していないと感じられたとき、経営理念に立ち戻ることができるからだ。

経営理念は「抽象的」で役に立たないのか?

あなたが出版社の編集者であると仮定しよう。上司からは新刊の企画を立てるように言われている。しかしその指示は、「面白くて売れる企画を立ててよ」ということで、いまいち不明瞭だ。ここでは、どのような企画を考えるべきなのだろうか?

もし小説を出版するならば、一般的に、芸術性の高い純文学よりも、エンターテインメント性の高い大衆小説のほうがたくさん売れるとされている。「面白くて売れる」ことを考えるなら、純文学より大衆小説を選ぶべきだろう。

しかし、ここで立ち戻るべきは経営理念である。もし経営理念に「当社の設立目的は、大衆に娯楽を与え熱狂させることである」とあるならば、もちろん大衆が熱狂するようなエンターテインメント小説を企画すべきだ。

もし、そうではなくて「当社の設立目的は、芸術性ある文学を世に広めることである」とあったらどうだろうか?

この場合、上司の指示と経営理念を照らし合わせると、たとえば「芸術性ある文学をなんとか面白くして大衆に受けるようにする」というものが企画の軸になる。

もしこの軸に不自然さを感じるなら、もしかして編集方針(中間システム)と経営理念が噛み合っていないのかもしれない。編集方針がおかしいなら、編集方針を修正する必要がある。あるいは、経営理念が時代に合っていないと言うならば、経営理念のほうを修正する必要があるかもしれない。

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