【解説】関係修復は遠い夢? ジョー・バイデン&習近平会談の「歴史的価値」とは?
ニューズウィーク日本版 / 2023年11月21日 13時0分
それでもバイデン政権は、手ぶらで帰ってきたわけではないとアピールしている。バイデンと習は今回の首脳会談で、緊張緩和のための新たな取り組みを数多く発表した。事故や連絡ミスによる軍事衝突を防ぐため、両国の軍隊間の専用通信回線を復活させる合意も含まれている。
両首脳はまた、中国からアメリカに密輸される合成オピオイド(フェンタニル)の不正流通対策や、気候変動に関する協力、AI(人工知能)に関する協議開始にも合意した。
バイデンは習の妻・彭麗媛(ポン・リーユアン)の誕生日への祝意を伝え、点数を稼いだ(二人の誕生日は共に11月20日)。ただしその後の記者会見で、バイデンは習を「独裁者」と呼んでしまった。せっかく誕生日で稼いだ得点も、これで帳消しだ。
一方、習はパンダ外交の継続を示唆して点数を稼いだ。アメリカでは近年、中国産パンダの貸出期限終了による返還が相次いでおり、首都ワシントンの動物園からもパンダがいなくなっていた。習は新たにパンダをアメリカに贈る意向を示した。
前出のプラシャント・パラメスワランに言わせれば、首脳間の「個人的な信頼関係は大事」だ。いざ危機が迫ったときに「最終決定を下すのは双方のリーダー」だからだ。実際、レーガンとゴルバチョフのレイキャビク会談では両人の相性が大きくものを言った。二人の個人的な友情がなければ、あそこまで核兵器廃絶の夢に近づけることはなかっただろう。
では、バイデンと習の場合はどうか? 同行した政府筋の大半は、今回の合意事項の全てを中国が守るという保証はなく、評価を下すのは時期尚早とみている。個々の合意を実行させる仕組みができなければ絵空事に終わるという冷めた見方もある。
それでもバイデン自身は、今回の会談で習を理解できたと思っている。記者団には「彼の出方は知っている」と語った。「もちろん意見の相違はある。多くのことについて、私と彼の見解は異なる。しかし彼は率直だった。善し悪しの問題は別として、ともかく率直な男ではある」
From Foreign Policy Magazine
ロビー・グラマー(フォーリン・ポリシー誌外交担当記者)
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