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悲しみ、恥、恐怖、嫌悪感、後悔...負の感情が人生に不可欠な理由と、ポジティブな「後悔」の仕方

ニューズウィーク日本版 / 2023年12月11日 6時45分

それに対し、マーコウィッツは、それとは異なる投資戦略を実践することにより、リスクを減らし、手堅く利益を手にできると主張した。その方法とは分散投資である。ひとつの銘柄に集中的に投資せず、いくつかの銘柄を購入するのだ。さまざまな業種の企業に投資することも重要だ。

この戦略を実践する場合、一度の投資で莫大な利益を得ることは難しいが、長い目で見れば、リスクを大幅に減らしつつ、はるかに大きな利益を上げられるというのである。あなたが投資しているインデックスファンドやETF(上場投資信託)は、マーコウィッツの現代ポートフォリオ理論に基づいた金融商品だ。

マーコウィッツの理論は非常に強力なものだが、私たちはしばしば、投資以外の場面ではこの考え方を忘れてしまう。

人はいわば感情のポートフォリオをもっている。そのなかには、愛や誇りや畏敬などのポジティブな感情も含まれるし、悲しみや苛立ち、恥などのネガティブな感情も含まれる。私たちは概して、ポジティブな感情の価値を過大評価し、ネガティブな感情の価値を過小評価する。

ほとんどの人は、一般的な助言や自分自身の直感に従い、ポジティブな感情ばかりをいだこうとし、ネガティブな感情を遠ざけようとする。しかし、このような方針で感情に向き合うことは、現代ポートフォリオ理論以前の投資戦略と同様、間違っている。

ポジティブな感情が不可欠であることは言うまでもない。そのような感情がなければ、人はどうやって生きていけばいいかわからなくなる。

ものごとの明るい側面に目を向け、楽しいことを考えて、暗闇のなかに光明を探すことは重要だ。楽観的思考は、肉体の健康とも関係している。また、喜びや感謝や希望などの感情は、私たちの心理的な幸福感を大幅に高めることもわかっている。

私たちは感情のポートフォリオのなかに、たくさんのポジティブな感情をもっておく必要がある。ネガティブな感情より多くのポジティブな感情をもつべきだ。

しかし、ポジティブな感情への投資を増やしすぎると、それはそれでよくない結果を招く。そのバランスを欠けば、学習と成長が妨げられて、自分の能力を開花させられなくなりかねない。

なぜか。ネガティブな感情も人間には不可欠だからだ。その種の感情には、私たちが生き延びていくことを助ける機能がある。

私たちは恐怖心のおかげで、炎上する建物から逃げ出し、蛇を踏まないように慎重に歩く。嫌悪感をいだくからこそ、有毒なものを避け、悪しき振る舞いを躊躇する。怒りの感情ゆえに、人は脅威や挑発に対して警戒心をいだき、正邪を見極める感覚が研ぎ澄まされる。ネガティブな感情が多すぎれば害があることは事実だが、少なすぎてもよくないのだ。

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