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悲しみ、恥、恐怖、嫌悪感、後悔...負の感情が人生に不可欠な理由と、ポジティブな「後悔」の仕方

ニューズウィーク日本版 / 2023年12月11日 6時45分

ネガティブな感情をもたない人は、同じ相手に何度も食い物にされたり、蛇に脚を嚙まれたりする。大きな脳をもち、直立二足歩行をする私たち人類は、ネガティブな感情を(ときおり、しかし必要なときは徹底的に)いだく能力をもっていなければ、ここまで生き延びていなかっただろう。

後悔が人生に不可欠な理由

悲しみ、侮蔑、罪悪感......さまざまなネガティブな感情をリストアップしていくと、ある感情が最も強力で最もしばしば見られることに気づく。

その感情とは、後悔である。

本書の狙いは、後悔が人間にとって不可欠な感情であることを改めて示すことにある。そのうえで、この感情がもつさまざまな利点を活用して、意思決定の質を向上させ、職場や学校でのパフォーマンスを改善し、より有意義な人生を生きるための方法を紹介する。

まず、後悔の名誉回復から始めたい。過去数十年の間に蓄積されてきた大量の学術研究を土台に分析を進める。

経済学者とゲーム理論家がこのテーマを研究しはじめたのは、一九五〇年代の冷戦期のことだった。原子爆弾で世界が破滅することが最も後悔すべき事態だった時代である。

その後ほどなく、いまでは伝説的な存在であるダニエル・カーネマンとエイモス・トヴェルスキーなど、数人の非主流派の心理学者たちが新しい発見に到達した。後悔は、重要な交渉のみならず、人間の精神そのものへの理解を深める手掛かりになると気づいたのだ。一九九〇年代に入る頃には、研究領域はさらに拡大し、社会心理学、発達心理学、認知心理学の研究者たちも、人が後悔の感情をいだくメカニズムを研究するようになった。

過去七〇年間の研究から、二つのシンプルだが重要な結論を導き出すことができる。それは、以下の二つの点だ。

後悔は、人間を人間たらしめるものである。

後悔は、人間をよりよい人間にするものである。

後悔の名誉を回復したあとは、人々がいだく後悔の内容を掘り下げる。

二〇二〇年、私はアンケート調査の専門家チームの協力を得て、アメリカ人の後悔について史上最大規模の定量調査を実施した。四四八九人の人々がいだいている後悔について調べ、回答者が打ち明けた後悔の分類を試みた。

その一方で、「ワールド後悔サーベイ」というウェブサイトを開設して、世界中の人々から後悔の体験談も募った。一〇五の国から、一万六〇〇〇を超す体験談が寄せられた。私は寄せられた回答を分析し、一〇〇人以上に追加のインタビュー調査をおこなった。

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