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900キロを実際に走行 ...インドシナ半島の大動脈「南部経済回廊」から見たASEANの連結性強化

ニューズウィーク日本版 / 2023年12月15日 16時0分

JICAでインフラ整備などを担当する社会基盤部の小泉幸弘次長は、日本がJICAを通じて2000年から整備を支援してきた国道1号線の現状を、実感を込めてそう話します。この国道1号線の整備で、2001年にホーチミンからプノンペンまで12時間ほどかかっていた移動が6時間に短縮されていると言います。

「また、プノンペンとタイ国境を結ぶ国道5号線(2013年から日本が整備を支援)は、片側2車線の道路改修がほぼ完成しています(※)。以前は時速30キロで8時間ほどかかっていたプノンペンからバッタンバンまでの区間が、今回、時速90キロ(規定速度)でスムーズに走行可能でした。この国道5号線が移動時間の短縮に与える効果は著しいと感じました」と小泉幸弘次長。

(※)国道5号線:JICAによる協力区間の総延長366kmの約90%が完成していることから、2023年11月22日、カンボジアのフン・マネット首相出席のもと、現地で完工式が実施された。

日本の協力で2015年に完成したカンボジアのメコン川に架かるつばさ橋においても、橋が架かる以前の渡河手段だったフェリーが1日5,000台程度(乗用車換算)の輸送能力だったのに対し、橋の開通により、1日の交通量が約15,000台(同)を記録しました。ベトナムとカンボジア、そしてカンボジアとタイの2国間における道路整備の状況および交通量の増大から、物理的連結性は飛躍的に向上していると話します。ただ一方で、現状では、ベトナム、カンボジア、タイの3か国が一体となってモノや人の往来が拡大する南部経済回廊全体としての機能は十分に果たせていないと小泉次長は指摘します。その要因の一つとして、越境手続きの煩雑さなど通関制度の整備が、期待どおりには進んでいなかったことを挙げました。

プノンペンとタイ国境を結ぶ国道5号線。整備前(左)と整備後(右)

(左)2015年に完成したつばさ橋 (右)2000年から4年間カンボジア事務所に駐在した経験をふまえながら語る社会基盤部の小泉幸弘次長

越境時に確認された連結性の課題

貿易円滑化や税関分野などを担当する徳織智美JICA国際協力専門員は、越境手続の現状について次のように話します。

「各国で税関や出入国管理局の電子化は進んでいるものの、申告書類の原本提出も求められており、民間企業などの回廊ユーザーにとっては二度手間になっています。また、貿易手続きを一つの窓口で一括して行う『シングルウィンドウ』を通して関係省庁間システムはある程度連結されていますが、国内で完結しており、隣国との連結までは進んでいない状況です」

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