900キロを実際に走行 ...インドシナ半島の大動脈「南部経済回廊」から見たASEANの連結性強化
ニューズウィーク日本版 / 2023年12月15日 16時0分
長年の協力の積み重ねを土台に、人と人との結び付きを強化
「カンボジア税関(関税・消費税総局)と今後の地域協力について協議した際、対応してくれたクン・ネム局長は、 10年以上前に、域内における税関のリスク管理に関するJICAの協力に携わっていた方でした。当時のことをよく覚えていて、その経験を生かし、今後もより良い連携をしていきたいという言葉をもらいました」
そう話すのは、東南アジア・大洋州部の渡辺大介次長です。JICAのこれまでの長年の協力で培ってきたネットワークを生かし、域内の人と人をつなげていくことでさらに成長に向けた知見が共有されていくと期待を込めます。すでに港湾分野では、アジア・大洋州における関連プロジェクトや研修の参加者を中心とした人材ネットワーク「港湾アルムナイ」が立ち上がっており、学び合いの場が形成されています。
また今回、南部経済回廊の沿線に進出する日系企業にも足を運んでヒアリングをする中で、民間企業との連携を進めるためにも大きなヒントを得たと言います。「現地での暮らしや働き方に触れて直接対話することで、アンケートやオンライン会議では知り得ない企業の本音が聞けました」(渡辺次長)
10年前にベトナムに駐在していた渡辺次長は今回、南部経済回廊を走り、改めてASEANの成長の勢いとパワーに圧倒されたと話します。「もはや経済力がある日本がすべてを支援する、という時代ではない」とし、民間企業をはじめ、他国とも連携し、この地域の各国や経済主体それぞれの長所や特徴が発揮されるよう、ファシリテーターとしての役割をJICAは求められていると語ります。
(左)タイのサケオ経済特区(SEZ)にある製造工場を視察 (右)東南アジア・大洋州部の渡辺大介次長
複眼的な視点で課題を洗い出し、現状を変えていく
「ASEANにおいて、産業集積や国家間での分業が進んでいるにも関わらず、JICAは地域全体としての課題を捉えられていないのでは、という問題意識から、経済回廊を実際に走行して現状を調査するというこのミッションがスタートしました」と語るのは、東南アジア・大洋州部兼南アジア部の馬場隆次長です。連結性をキーワードに、JICAの各国担当課だけでなく、インフラ整備や貿易円滑化などの分野の担当者や専門家、現地事務所員が共に現場に足を運び、国を横断した地域的な課題を複眼的に洗い出すことができたと言います。
「例えば、カンボジア政府が旗印を掲げる電気・電子・自動車産業について、企業は人材不足を理由に進出をためらっていることが分かりました。であれば、カンボジア政府、民間企業双方とのパイプを生かし、JICAが同国の産業人材の育成を支援する協力を進めることでWin-Winの状況を作ることができるはずです」。開発協力の実務者として、さらに能動的に取り組む姿勢が重要だと、馬場次長はこの先を見据えます。
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