900キロを実際に走行 ...インドシナ半島の大動脈「南部経済回廊」から見たASEANの連結性強化
ニューズウィーク日本版 / 2023年12月15日 16時0分
また、カンボジアは国境外通関(Off-Border Clearance)を導入しており、通関手続きを国境ではなく近隣にある経済特区(SEZ)やドライポート(内陸港)などに移動して行う必要がある一方、ベトナムは国境上で対応し、タイも国境上で対応するものの、人と貨物を別の場所で手続きする必要があるなど、3か国で国境の役割や形態が異なっている点も指摘します。
「アフリカでは地域統合がそれなりに深化しており、越境する際に両国それぞれで行われていた通関や出入国などの手続きを一か所で行えるようにする「One Stop Border Post(OSBP)」の導入が進んでいます」と、制度面での連結性はアジアよりアフリカの方が進んでいる点に触れ、アジアの現状に即した貿易円滑化の在り方を模索する必要があると徳織専門員は話します。
(左)徳織智美・JICAガバナンス・平和構築部国際協力専門員 (右)モクバイ国境(ベトナム)からバベット国境(カンボジア)に入る中間地点(No man's landという)で、カンボジア国境の開門を待つトラック。書類の不備などがあれば、手続きに数日を要することもある
合意形成のシステム作りの重要性
ガバナンス・平和構築部ガバナンスグループ行財政・金融チームの根岸精一課長は、各国の国境に対する捉え方が異なる点について、経済成長が進むベトナムやタイでは、移民対策や密輸取締り対策が主眼となる一方、カンボジアは関税収入の確保に注力している面を垣間見ることができたと話します。「回廊として道はつながっているものの、利害関係や外交関係が複雑にからみあい、それぞれの国が別々の方向を向いている」との見方を示しました。
「そのため、この地域の連結性強化を目指すためには、国境を接する国々が集まり、通関を含む越境手続きの制度上の課題をお互いに認識した上で、関係者が一緒になってそれらの手続の改善に向けて議論・合意形成する仕組み作りが必要となります」と根岸課長。アフリカの回廊整備支援では、国境関係機関が集まる機会を定例化し、お互いの業務や手続きに関する理解を深めつつ、手続きやプロセスの調和化に向けて努力する取り組みをしていると言い、南部経済回廊においても「JICAが仲介役となり、この地域の貿易円滑化に向けてポジティブな効果を生み出せるよう取り組みたい」と意気込みます。
(左)ガバナンス・平和構築部ガバナンスグループ行財政・金融チームの根岸精一課長 (右)ベトナムとカンボジアの国境、バベット税関で職員らにヒアリングする徳織専門員(写真中央列右端)と根岸課長(同左端)
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