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高校生に学術論文が書ける? 悠仁さま「トンボ論文」に向けられた「不公平」批判について考える

ニューズウィーク日本版 / 2023年12月26日 19時0分

1965年にノーベル生理学・医学賞を受賞した「DNAの二重らせん構造の解明」は、53年にNatureに研究成果が掲載されました。2012年にノーベル生理学・医学賞を受賞した京都大学iPS細胞研究所の山中伸弥名誉所長・教授は、マウスの細胞から多能性幹細胞を作ることに成功し、06年にCellで報告しました。

一方、大学や研究所は、所内の研究者の研究報告の場として定期出版物を発行することがあります。掲載される論文は新奇性があるものというよりは、長年コツコツと調査したものなどがメインとなります。出版物によっては、査読がなかったり、日本語で執筆してもよかったりする場合もあります。

国立科学博物館研究報告A類(動物学)は、同博物館の研究者や共同研究者が学術論文を掲載できる出版物で、査読があるので研究の質には一定の信頼性があります。ただし、論文は日本語で書いてもいいので、敷居は低めです。「トンボ論文」は、悠仁さまが同博物館の清氏らと共同研究した成果なので、この研究報告誌に発表したことは妥当と言えるでしょう。

今回の論文は、考察で「赤坂御用地で確認されたトンボは止水性の環境(池など)に生息するものがほぼすべてであり、流水性の種に乏しいことは周囲の緑地のトンボ相と同じである。そのため、流水性の種の飛翔分散による外部からの侵入が限られる」と指摘したり、「今回、新たに発見された種について、国内での分布拡大、一過性の飛来、赤坂御用地の環境変化など種ごとに要因を検討」したりするなど、手厚い議論が展開されています。

率直に言って「高校生が初めて書いた論文にしては立派すぎる」感はあるのですが、悠仁さまが共同研究者とともに討論をした結果を文章に落とし込んだとすれば、不思議ではありません。

熱意のある高校生ならば、適切な指導を受ければ適当な学術出版物に論文を書くことは可能だとして、「普通の高校生であれば、論文執筆・掲載の機会は得られない」という批判もあります。

確かに最近は、地域の高大連携やオープンキャンパスでの研究体験などが増えましたが、成果を学術論文としてまとめて発表する機会まで得られる高校生はほとんどいません。市民科学分野などで、意欲のある非専門家はデータの収集だけでなく、分析や論文執筆にも貢献できるような訓練を積める仕組み作りも必要かもしれません。

「トンボ愛」は本物

今回の悠仁さまのトンボのデータは、かつて国立科学博物館の研究者が同じ場所で調査をしており、空白期間を埋めるような貴重なものだったので、共同研究者らもとりわけ「この調査結果を是非とも世に出したい」と考えたのでしょう。

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