1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 国際
  4. 国際総合

「イデオロギーの対立」は社会にどれくらい根付いているか?

ニューズウィーク日本版 / 2024年2月5日 17時0分

図1 政策質問の回答分布

図1を見ると、75〜80%の回答者が合意しているような争点はそれほど多くなく、「道徳教育の充実」への賛成(+どちらかといえば賛成)と「女性天皇反対」への反対(+どちらかといえば反対)だけである。興味深いのは、「道徳教育の充実」と「女性天皇反対」のいずれも保守派の主張であるのに対し、前者については支持されているが、後者については不支持が多いというように、世論は保守の言説ともリベラルの言説とも必ずしも一致しないことである。

賛否の差が30%以上あり、多数派と少数派に分かれる項目としては、反対よりも賛成の割合がかなり多い「財政出動」「夫婦別姓」「同性婚」「防衛力強化」や、賛成よりも反対の割合がかなり多い「コロナ感染対策の徹底」「公務員数の拡大」「ワクチン義務化」が挙げられる。

賛否が拮抗しているのは「ガソリン車廃止」(賛成36%、反対41%)、「移民受け入れ」(賛成35%、反対45%)といった比較的新しい争点である。ただし、注意が必要なのは「わからない」という回答の多さである。「ガソリン車廃止」では24%、「移民受け入れ」では20%が「わからない」を選択している。

この2つの項目だけでなく他の質問項目でも10%〜30%の「わからない」回答が見られる。16項目すべての政策質問に答えられたのは全体の26%に過ぎず、1/3の回答者は4つ以上の項目で「わからない」(あるいは無回答)を選択している。

私たちが作成した質問の中には普段それほどニュースにならないような項目があるのも事実ではあるが、政党レベルでは激しい対立が報じられるような政策においてでも「わからない」は相当程度みられるのが特徴と言える。

「イデオロギー位置」を自認していない回答者が多数

このような「わからない」回答の多さは、イデオロギー質問においても観察できる。SMPP調査では、0がリベラル、10が保守的としたときに自分の政治的立場はどこかを尋ねる質問が含まれる(図2)。0〜4をリベラル、5を中間、6〜10を保守的と分類をすると、全回答者に占める割合はそれぞれ20%、16%、33%となる。

図2 イデオロギー質問の回答分布

保守は全体の1/3を占め、リベラルの1.5倍以上となっており、保守を自認する人の割合は多い。ただし、ここでも目立つのは「わからない」の多さであり、28%を占めている。つまり、回答者の3割弱は自分自身のイデオロギー位置を把握していない。若年層に目を向ければ、18〜29歳のうち43%は「わからない」と回答をしており、30歳代でも35%にのぼる。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください