「ザ・マッカラン1926」1本4億円! ウイスキー市場が、ここまで爆発的に高騰した理由とは?
ニューズウィーク日本版 / 2024年1月25日 18時5分
<1本のウイスキーボトルに、オークションで天文学的な値段が付く。ブームの始まりから、その背景とストーリーを紐解く>
昨年11月、60年間熟成された希少なスコッチウイスキー「ザ・マッカラン1926」のボトルがオークションにかけられ、約219万ポンド(4億円強)で落札された。私はこの価格に唖然としたが、驚きはなかった。
昨今、ウイスキー市場は活況を呈している。バッファロートレース蒸留所(米ケンタッキー州)のパピーバンウィンクルのようなバーボンは、一度消費者に渡った商品を再販する2次流通市場で天文学的な値段が付く。ここ10年間で人気となったジャパニーズウイスキーは、かつての50倍もの高値で取引されている。
2022年7月のオークションでは、1975年もののアードベッグのウイスキー樽が約1900万ドルで落札された。97年、スコットランドのアードベッグ蒸留所がグレンモーレンジ蒸留所に丸ごと買収されたときの価格は約1100万ドルだった。
筆者は高級品市場を10年間研究してきたが、注目すべき変化が少なくとも2つある。
1つは経済的側面。レアもののボトルや樽など、供給量の少ないものは高値で売れる。さらに、ウイスキーの価格がここ20年で急上昇した理由の1つは投資家の存在だ。一部には高級ウイスキーのような高額のコレクターズアイテムを、株や債券の代替資産と見なす投資家もいる。
2つ目の、見過ごされている(おそらくもっと興味深い)要素は社会のトレンドだ。最近は職人技を駆使した手作りの製品が注目されるようになった。スコッチウイスキーのようにフレーバー(風味や香り)と同じぐらい伝統が重視される製品は特にそうだ。
2000年以降に復活したウイスキーブーム
ウイスキーの歴史はブームとその崩壊の繰り返しだった。遅くとも15世紀後半にはスコットランドとアイルランドで生産が始まり、18世紀半ばから後半にヨーロッパの他地域に広まった。
19世紀後半から20世紀前半には、特にアイリッシュウイスキーにとってブームの時期だった。アメリカでは禁酒法のせいで酒造業者が地下に潜ったものの、20世紀半ばには復活した。
だが、1970年代からウオッカやジンなどの「ホワイトスピリッツ」が台頭し、ウイスキーのような「ブラウンスピリッツ」の価格は下落。熟成ウイスキーの在庫が大量に積み上がり、多くの蒸留所が廃業に追い込まれた。
それでも2000年以降、ウイスキーは復活を遂げる。単一の蒸留所で造られる貴重なシングルモルトなど、一部の製品の価格は過去10年間で約600%も上昇した。
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