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英国王チャールズ3世が癌に...病状が悪化した場合にイギリスが迫られる3つの選択

ニューズウィーク日本版 / 2024年2月13日 20時44分

だがオーストラリアは何の対策も取っていないため、ウィリアム皇太子が摂政になった場合もオーストラリアの元首の役目は果たせない。

チャールズが癌と診断され英連邦加盟国をはじめ世界中に激震が走った PHOTO ILLUSTRATION BY MING YEUNG/GETTY IMAGES

3つ目の選択肢は、公務を遂行できなくなった君主の退位だ。

これは異例の事態で、英国王を元首とする英連邦の国々はどう対応すべきか頭を抱えることになる。

1936年にエドワード8世が愛する女性と結婚するために退位を決意したときには、国王自身が作成した退位詔書と、英議会が制定し英連邦の加盟国も承認した退位法に基づき、正式な手続きが取られた。

だが今では英連邦加盟国の承認は簡単には得られそうにない。

例えばオーストラリアは、86年に制定された法律で立法府の完全な独立を達成し、英議会が制定した法律は国内では適用されなくなった。

そのためチャールズが退位すれば、オーストラリアは独自に元首の退位手続きを行う法整備が必要になる。

さらに元首の継承者については、オーストラリアの法律に含まれる王位継承に関する規定、すなわちビクトリア女王の継承者について書かれた、オーストラリア連邦憲法第2節の「連合王国(イギリスのこと)の主権の相続人と継承者」が今回も適用されるかどうかが議論されることになり、紛糾は避けられない。

オーストラリア以外でも、英国王を元首とする国々では厄介な法的問題が生じることが予想されるため、退位という選択肢は回避される公算が大きい。

万一に備えて法整備を

では、チャールズが公務を十全に遂行できない状態になり、国務参事官か摂政が務めを代行することになった場合、英国王を元首とする国々にはどんな影響が及ぶだろう。

オーストラリアの場合、今も残っている元首としての英国王の実質的な権限は、連邦総督と州総督の任免権だけだ。

現在の連邦総督の任期は今年半ばに切れるため、その時点でチャールズの病状が悪化していれば、国務参事官も摂政も総督を任命する権限がないため、オーストラリア連邦の総督は空席となる。

ただ、次期総督が決まるまで、現職のデービッド・ハーリーが職務を続行することも可能だ。

ハーリーが任期満了で退任した場合は、一時的に州総督が行政官として総督代理を務めることになる。

これは総督のポストが空席になった場合の慣行だ。州総督が行政官になった州では副総督(多くの場合、州最高裁判所長官を兼務)が代行を務める。

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