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「海外在住・日本人作曲家」の起源...故国を離れて初めて日本を「見出した」音楽とは?

ニューズウィーク日本版 / 2024年2月28日 11時10分

もちろん消費社会下では、結果的に新しい演奏スタイルが、クラシック界でもその新味ゆえに耳新しく、人気も出て売れるということもあるので、その点で実際の現象だけ見れば両者間に歴然とした差異を見出すのはなかなか難しいのだが、変化を駆動する発端のモティヴェイションがかなり違うのは事実である。

ポピュラー音楽のなかにも懐古的な要素を持つものはあるけれど、それは限られているわけで、絶えず新しい響きやリズムや、近年では聴き手の新たな参加形態などを求めて音楽が変化している。

他方、クラシックの場合はむしろ、作品が作曲された何百年も前のスタイルを再考し、可能な限り復元しようとする研究(いわゆる「古楽」研究を発端とした)のなかから、結果的にここ数十年の新たな演奏様式ができあがってきたという経緯があるのだから。

当然のことながら、クラシック界のこうした変化も、イギリスやオランダといったヨーロッパの国々から始まっており、日本の音楽家たちがそれを「学ぶ」までにはかなりのタイムラグがあった。

そうした情報を感知し技術として習得し、またその習得後もヨーロッパに住み続けて、絶えず新たな刺激を受け続ける必要がある。ことに、HIPと略される「歴史的知識に基づく演奏historically informed performance」が日々更新されている現場にいるような、ソロ活動やアンサンブル活動をしている演奏家には、このことがより的確に当てはまるだろう。

もちろん、現在合衆国ないしヨーロッパのどのオーケストラにも必ずひとりふたりは所属している日本人演奏家たちのすべてが、そうした意識で音楽活動を「国外で」行っているわけではないにしても、モーツァルトやベートーヴェン、ヴァーグナー、マーラーといった作曲家たち(例がドイツ系だけで申し訳ないが、もちろんフランスやイタリア、ロシア等々、他の諸国の作曲家たちを含めて)のオーケストラ作品演奏スタイルの急激な変化も顕著であるわけで、常に最新の刺激と変化の最前線の感触を肌で得ながら、日々の演奏活動を続けられる現場がそこにあることには変わりがない。

「国外」在住の作曲家像

国外で活躍するクラシックの日本人演奏家は、現在けっして珍しい存在ではない。人数の上だけで計るならば、他の芸術ジャンルはまったく及ばないだろう。

しかしながら、オリジナルなもの(作品)を創る音楽家、すなわち作曲家として国外に在住しながら創作活動を行うひとは、それに比べるとはるかに少ない。

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