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iPhone不買運動、「日の出」を連想させるポスターの罵倒...中国政府「非公認の愛国」が暴走する理由

ニューズウィーク日本版 / 2024年3月11日 19時40分

中国の場合、これらの対応は個別の組織の独自の判断というより、共産党の意向が働いた結果とみた方がよい。

何が'愛国'かは党が決める

中国政府はこれまでナショナリズムを鼓舞し、コロナ禍でも「外国の責任」を強調した。その中国政府自身が草の根の過剰なナショナリズムを警戒するのは、一見すると矛盾したようにも映る。

しかし、習近平体制が先進国との対決を演出したり、強権的な統治を正当化したりするツールとして愛国やナショナリズムを用いているなら、そこに大きな矛盾はない。

習近平国家主席は昨年6月、「'愛国'の真髄は国とともに共産党や社会主義も愛すること」と述べた。ここからは中国政府がナショナリズムを、あくまで「共産党体制への奉仕」を大前提にしていることがうかがえる。

言い換えると、「何が'愛国'か」を判断するのは共産党ということだ。だから、いわば官製ナショナリズムをはみ出して勝手に'愛国'を叫ぶのが許されなくても不思議ではない。

実際、昨年11月に習近平がアメリカのバイデン大統領と会談して貿易問題を協議した後、CCTVをはじめ国営メディアは反米のトーンを急に弱め、右派コメンテーターやブイロガーの多くがそれに歩調を合わせた。

'愛国'の暴走が増える懸念

要するに共産党は都合に応じて'愛国'のアクセルとブレーキを踏み分けてきたわけだが、草の根のナショナリズムの暴走を取り締まるのは徐々に難しくなる公算が高い。

その大きな理由は経済にある。

2023年のGDP成長率は目標をやや上回る5.2%を記録したものの、名目GDPに占める債務の割合は287.8%(前年比13.5%増)にのぼった。

ここからは消費が低迷するなか、政府支出がGDPを支えていることがうかがえる。

これと並行して、若年層の失業率は46.5%にも及ぶと試算される。

習近平は3月5日、債務削減と構造改革を目指すと宣言したが、その実行性は未知数のままだ。

これまで共産党体制は、経済成長のパフォーマンスによってその支配が正当化されてきた。裏を返せば、経済パフォーマンスの悪化は、それまで封印されていた社会不満を表面化させやすくする。

多くの国では社会・経済的な停滞が政府批判を招く。しかし、中国の場合、ゼロ・コロナ政策への抗議デモなど、よほど特異な状況でなければ政府批判は難しい。

とすると、外国や外国人に対する排外主義は、いわば大手をふって不満をぶつけられる、数少ないものになる。「政府公認」という思い込みがあればなおさらだ。

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