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車いすユーザーの声は「わがまま」なのか? 当事者に車いす席の知られざる実態を聞く

ニューズウィーク日本版 / 2024年3月25日 11時30分

というのも、人によって乗っている車いすに違いはあるけど、僕のは背もたれが腰くらいまでしかなくて、一般座席のようにもたれかかることができないから、長時間車いすのままで映画を観ること自体がかなり身体的に苦しい。

もちろん、車いす席を用意してくれていることは有難い。だけど、そこが本当に観やすいどうかを、検証した上で設置したとは言い難い状況のシアターもある。単純に、車いすで安全にアプローチできるスペースだけが用意されている、という印象の作り方が多い。


――車いす席というのは、座席がなくて、スペースがあるだけということか。

そう、そこの区画が柵で囲われているような感じだ。そして大抵は一箇所に固まって2、3席分のスペースが確保されている。従って、一般の方のように前方・中段・後方や、左側・右側・真ん中など、観る席を自由に選択することができない。あとは一般席のようにドリンクホルダーが設置されていないことが多いから、映画を観る時に 「ポップコーンにコーラ」もゆっくりと楽しめない。

だから僕の場合、車いす席は買わずに、シアター内の真ん中に伸びる通路沿いの席のチケットを買って、車いすからその席に自分で移乗する。そして、車いす席のスペースに自分の車いすを置かせてもらっている。チケットを買うときにスタッフの方に、「一般席で観たいのですが、自分の車いすを車いす席のスペースに置いてもいいですか」と確認している。仮にそこに車いすを利用する人が来た場合には置けなくなるので、通行の邪魔にならないところへの移動をお願いすることになるだろうし。

 


――シアター側は、そうする上での規則がなくても、善意や合理的配慮というもので対処しているということか。

規則の有無は分からないけど、その状況ごとに対応してくれているのだと思う。僕の場合はシアターで従業員の方に車いすの介助をしてもらったことはないけど、ドリンクを持ってきてもらったことはある。ドリンクを持ちながら車いすをこぐというのはかなり難しい。

シアター内に毛足の長い絨毯が敷かれている場合、車いすが右に左にと流れていってしまい、まっ直ぐ進むのが難しいので、力強くこがなければならない。過去に一人で映画を観に行ったときには、お店の方に「席まで持ってきていただくことは可能か」と伺うと、快く持ってきてくれた。

――一般の席に移動するときは、同伴者などに手伝ってもらっているのか。

僕は自分ひとりで乗り移れてしまうので、誰かに手伝ってもらうことはない。自分の場合は、段差のない席であれば一般席でも一人で利用できる。車いすは妻に、車いす席のスペースまで持って行ってもらう。でも、自力で一般席への移乗が難しい人、また自分の車いすからは降りたくない人からすると、今後車いす席の在り方や作り方をアップデートして欲しいという声が多く挙がりそうだ。

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