ロシア軍はもう「クリミア大橋を使っていない」──ウクライナ高官
ニューズウィーク日本版 / 2024年3月28日 15時50分
<ロシア本土からクリミアへの重要な補給路でプーチンのプロパガンダツールでもあるクリミア大橋が遂に堕ちた?>
ロシア軍はもうクリミア大橋を使っていないと述べている──ウクライナ政府はそう述べる。全長約19キロメートルのクリミア大橋はこれまで、ロシア軍がクリミア半島やウクライナ南部の部隊に兵器や弾薬を供給するための主な補給路として利用されてきた。
【動画】昨年10月にクリミアでロシア艦船をウクライナの水中ドローンが攻撃する現場とみられる映像
ウクライナ保安庁のバシーリ・マリュク長官はインタファクス・ウクライナ通信に対して、ウクライナ軍の攻撃により、ロシア軍の物資補給は途絶えていると説明。だが橋の構造上の安全性が確認されれば、軍事物資の補給が再開される可能性が高いとも述べた。
ケルチ大橋とも呼ばれるクリミア大橋は、ロシア南部のクラスノダール地方と、ロシアが2014年に併合したクリミア半島を結ぶ戦略的に重要な橋だ。ロシアとウクライナの間で2年以上にわたって続く戦争の中で、クリミア大橋は何度もウクライナ軍の標的にされ、ロシア当局によって一時閉鎖されていた。
マリュクがインタファクス・ウクライナに語ったところでは、ウクライナ軍が攻撃する前は毎日、兵器や弾薬を積んだ列車46本がクリミア大橋を渡っていた。だが現在では、一日に橋を渡る列車の数は5本のみで、そのうち4本が乗客を運び、残る1本は一般消費財を運んでいるという。
繰り返し標的に
「敵は現在、兵器や破壊手段の供給にクリミア大橋をまったく使っていない」とマリュクは述べ、だが橋の復旧が終われば「おそらく彼らは橋を使った弾薬の補給を再開するだろう」とつけ加えた。
本誌はこの件についてロシア国防省にメールでコメントを求めたが、これまでに返答はない。
ロシアは2023年8月、ウクライナ軍がクリミア大橋を複数のミサイルで攻撃したと発表。その前月には、爆発物を積んだウクライナ産の水上ドローン(無人艇)がクリミア大橋を攻撃していた。
2022年10月には、爆発物を積んだトラックがクリミア大橋を走行中に爆発。インターネット上で拡散された動画には、爆発によって破損した道路橋と鉄道橋が映っていた。クリミア大橋では2023年7月にも爆発があり、ウクライナが後に攻撃を行ったことを認めている。
マリュクは2023年11月、「クリミア大橋は崩壊する運命にある」と述べていた。
クリミア大橋は、ロシアがクリミア半島を一方的に併合した後直ちに建設された。2018年の開通時にはロシアのウラジーミル・プーチン大統領が自らトラックを運転して橋を通行。これによってクリミア大橋はロシアにとってのプロパガンダツールとなり、ウクライナにとっては軍事標的となった。
2月後半には、ウクライナ国防省情報総局のキーロ・ブダノフ局長がウクライナの一般市民に対して、クリミア大橋を使わないようにと遠回しに警告を発していた。
ウクライナはNATO加盟国でウクライナを支援しているドイツに対して、長距離巡航ミサイル「タウルス」の供与を求めている。この「タウルス」について複数の専門家は本誌に対し、フランスとイギリスが既にウクライナに供与した「ストームシャドウ/SCALP」ミサイルと類似の機能を持つが、弾頭の設計がやや異なるためクリミア大橋の攻撃により適していると指摘していた。
エリー・クック
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