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エリート街道を捨てメンズ・ストリップクラブを立ち上げた男が語る「これこそ、わが人生」

ニューズウィーク日本版 / 2024年3月29日 16時21分

チャンは夢を追って男性ストリップクラブを立ち上げた ANDREW CHAN

<エリート校を卒業し、ウォール街での地位と高額の報酬を得た筆者が下した男性ストリップクラブ開業の決断と夢。自分の手で人生を切り開くことを選んだ挑戦の物語>

私は移民の子だ。親からはずっと、一生懸命に勉強しろ、いい成績を上げろ、それが成功への道だと教えられてきた。いい大学に進学し、いい仕事に就け。そうしないと負け犬になるぞ、と。

だから私は親に言われたとおりに励み、高収入の仕事に就けば成功し、人生はバラ色だと信じて生きてきた。

2007年にコーネル大学を卒業し、ニューヨークでエンジニアとして年収6万5000ドルの仕事に就いた。これで成功だ、と私は思った。

でも、違った。

仕事は退屈で、惨めだった。建設現場ではしごに上り、暖房、換気、空調装置の測定をする。そして毎日同じ計算をして、同じ報告を書く。

退屈だった。しかし運よく週末に、男のストリップクラブで働けることになった。人生が少し刺激的になり、9時から5時までの単調な生活から逃れることができた。

その頃、ウォール街に就職した大学時代の仲間が自分よりも稼いでいるのを知った。それで自分もと思い、エンジニアの仕事を辞めてニューヨーク大学ビジネススクールに通い、どうにかウォール街に転職できた。年俸は15万ドル。これで成功だと思った。

でも、違った。

私の仕事は、トレーダーや経営陣が適切な判断を下すのに必要なデータを提供することだった。仕事は同じことの繰り返し。自分のやりたいことじゃない。そう思った。

一方で、週末のストリップの仕事は続けていた。内向的な私だが、ストリップでは自分を表現し、別の人格を演じることができた。ほかの業界にはない何かがあると思えた。

しかも、うちのクラブのオーナーはどんどん店を増やし、ストリップ以外の娯楽にも事業を広げて急成長していた。サラリーマンでは考えられない人生だ。

そこで私はパートタイムの起業家を志した。自分の未来を、自分の手で切り開けると思ったからだ。

一度きりの人生だから

コロナ禍で悶々としていた時期に、私は自分の男性ストリップクラブを立ち上げるという大きな決断を下した。名付けて「エキゾチック・メン」。でも経営は未知の世界で、右も左も分からない。失敗したらどうしようとばかり考えていた。

しばらくして、私は自分が失敗をネガティブに捉えていることに気付いた。学校でも会社でも、とにかく失敗しないように努力してきた。でも起業した以上、考え方を変えなくてはいけない。失敗は成功の糧となる。失敗から学んでこそ成功はある。

21年1月、エキゾチック・メンのサイトを立ち上げた。最初の2年間はチケットが1枚も売れなかった。いろいろ試したが、失敗の連続。でも諦めなかった。

昨年になって、ようやく少しずつ客がつくようになった。まだ採算点すれすれだが、ささやかな成功には違いなかった。長くて暗いトンネルの先に、少しは光が見えてきた。今はそんな気がする。

まだ辞めていないが、ウォール街の仕事には見切りをつけた。今はストリップの仕事だけでは食べていけないものの、そうなる日は近い。

世の中には、夢があっても失敗を恐れて会社を辞められない人がたくさんいると思う。でも一度しかない人生だ。失敗なんて恐れるな。私はその気持で何とかやれた。

アンドルー・チャン(男性ストリップクラブ創業者)

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