検索結果をプロパガンダと陰謀論だらけにするデータボイド(データの空白)脆弱性
ニューズウィーク日本版 / 2024年4月8日 15時10分
データボイド脆弱性を中国のプロパガンダメディアが利用した
コロナ禍では中国がデータボイド脆弱性を利用してコロナ起源はアメリカ陸軍のフォート・デトリック研究所という偽情報の拡散を行っていた。2021年の8月から9月頃、グーグルニュースで「フォート・デトリック(Fort Detrick)」を検索すると、中国のプロパガンダメディアCGTNとGlobal Timesで占められていた。YouTubeでもトップの6つの検索結果のうち4つを中国メディアが占めた。
このように陰謀論などは、ふつうならほとんど検索されることのない固有名詞(「フォート・デトリック」など)あるいは文章(「ホロコーストはあったのか?」など)で生じるデータボイド脆弱性を悪用する。疑問を持った人々が検索すると、そこに表示されるのは陰謀論のサイトばかりになる。
データボイドの問題は検索エンジンだけではなく、SNSプラットフォームでの検索、動画サイトの検索、検索の際に表示されるサジェストワードなども起きる。グーグルでは検索に対して、回答がすぐに表示されることがある。たとえば「30+11=」と入力すると「41」という答えを表示した電卓が表示される。2017年に、「オバマはクーデターを計画しているか?」と入力すると、グーグルは「任期終了時に共産主義者によるクーデターを計画している可能性があります」と答えていた。今、日本語で同じことを入力すると、グーグルが偽情報を拡散している、というニュース記事が上位に表示される。検索エンジンは裏側でデータボイド脆弱性に対処してきた。ただ、まだ充分と呼べるレベルには達していない。
5年間ほとんど放置されてきたデータボイド脆弱性
データボイド脆弱性には5つの対応があることが指摘されている。
1.ニュース速報
大きなニュースが速報で流れると、それを反映した検索が大量に発生する。しかし、その検索に対応したコンテンツがほとんどない場合も多く、ここにデータボイド脆弱性がある。あまりニュースに登場しない地名が現れる場合は特にそうだ。
2.戦略的新用語
新しい言葉を作ったり、過去に使われていてもあまり知られていなかった言葉を使うこともある。当然ながら、その用語で検索しても結果はほとんどないため、操作が可能となる。
3.時代遅れの言葉
ほとんど使われなくなった言葉も利用できる。使われなくなっても言葉は検索エンジンに残る。ニュース速報のように爆発的に伸びることないが、たまに検索する人を騙すことはできる。
この記事に関連するニュース
-
グーグル、検索サービスに生成AI導入へ
AFPBB News / 2024年5月15日 18時47分
-
情報BOX:米が敵対国の最先端AI利用を警戒、具体的な懸念は
ロイター / 2024年5月10日 18時9分
-
見直しが始まった誤・偽情報対策 ほとんどの対策は逆効果だった?
ニューズウィーク日本版 / 2024年5月8日 19時26分
-
誰もが悩む「名前が出てこない問題」がみるみる解消…ChatGPTと「検索エンジン」の決定的な違い
プレジデントオンライン / 2024年4月28日 8時15分
-
生成AI時代のデマ・フェイク問題、SNSの安全性を取り戻すには?
ASCII.jp / 2024年4月24日 11時0分
ランキング
-
1イラン大統領死亡、墜落ヘリは1960年代開発の米国製ベル212…制裁下で部品調達困難
読売新聞 / 2024年5月22日 0時28分
-
2中国外相、台湾新総統を批判 「国家と祖先を裏切る」
ロイター / 2024年5月21日 19時50分
-
3インタビュー:ウクライナ、同盟国の支援加速・直接関与を働きかけ=ゼレンスキー氏
ロイター / 2024年5月21日 8時12分
-
4解任のロシア軍司令官を逮捕 前線の窮状訴え、詐欺容疑
共同通信 / 2024年5月21日 23時2分
-
5戦術核兵器の演習開始=ウクライナとNATO威嚇―ロシア国防省
時事通信 / 2024年5月21日 23時57分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください