標的の癌細胞だけを免疫システムが狙い撃ち...進化型AIを駆使した「新たな癌治療」とは?
ニューズウィーク日本版 / 2024年5月1日 10時35分
腫瘍のすぐ外側にT細胞とB細胞が集まり、「3次リンパ様構造」と呼ばれる移動式の司令塔を形成すると、免疫細胞が強力に働いて癌を攻撃する。「完全に予想外だった」と、シャーマは言う。
3次リンパ様構造が形成されれば、免疫療法が威力を発揮すると考えられる。だとすれば、この構造の形成を促す要因は何か、全ての患者の腫瘍にこの構造が形成されるようにできないものかと、シャーマは問う。
つまり、T細胞とB細胞に3次リンパ様構造の形成を促す微細なシグナルを解明できれば、免疫細胞の攻撃が成功する可能性を大きく高めることができるだろう。
スタンフォード大学のノーランはCODEXを使って、頭頸部癌の一部の腫瘍がT細胞の攻撃をどのように防ぐかを解析している。ノーランは画像上で、私たちの体を構成する細胞を取り巻く細胞外基質の中に、構造タンパク質から成る分厚い壁を発見した。これらの高分子化合物は、免疫細胞の腫瘍への浸潤を妨げていると考えられる。この洞察は、壁を分解するように設計された酵素を使って免疫反応を高めるという、新しい手法の可能性を示唆している。
CODEXが生み出す驚異的な量のデータから学べることを考えれば、これらの観察はほんの始まりにすぎない。理論上は、CODEXは腫瘍内部で起こる全てのことを分子レベルで解析できる。
そこで、大量のデータを消化するためにAIの出番だ。AIは急速に癌研究の中心的なツールになりつつある。AIを使えば、治療に反応するかどうかに関連する細胞や、その組み合わせを特定できるだろう。
そして、解決策を提案し、患者の免疫システムが癌に打ち勝つことを妨げているものを排除する薬を設計することもできるだろう。
14年創業のインシリコ・メディシンは、数十万人の生検サンプルなど一般に入手可能なデータを使ってAIを訓練している。現在は2万個の遺伝子を癌への寄与度に基づいてランク付けし、生物学的経路をモデル化して、どの遺伝子が癌を進行させるのか、何が癌を引き起こすのか、どの薬が最も効果的かを解析するプロセスの自動化を進めている。
昨年2月には71個の低分子を特定し、分子化合物を合成して、一部は動物実験に入った。腫瘍は免疫システムに検出されないように自分を「食べるな」というシグナルを出すが、これらの低分子はそれぞれ、そのシグナルをブロックする独自の構造を持つ。最も有望な候補は最近、初期の臨床試験が始まった。
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