見直しが始まった誤・偽情報対策 ほとんどの対策は逆効果だった?
ニューズウィーク日本版 / 2024年5月8日 19時26分
2016年の大統領選においてはフェイスブックで900万のエンゲージメントの記事が最大だったが、15億人のフェイスブックユーザーのエンゲージメントとしては脅威を感じるほどの数ではない。それ以上のエンゲージメントを獲得したふつうのニュースはいくらでもある。
また、SNSを含め多くのメディアにおいてニュースの消費は多くないという論文「Evaluating the fake news problem at the scale of the information ecosystem」もある。SNS上のニュース研究はテレビより多いがニュースの消費ではテレビ経由が多く、ニュースに関する研究では偽情報テーマは飛び抜けて多いがニュース全体の中での偽情報の比率は極めて少ない。調査研究において誤・偽情報に過度に集中していることがわかる。後述のフォーリン・アフェアーズの記事で「パニック」という言葉が使われたのも当然だ。
以前書いたように思い込みや仮説に内包されている問題はビッグデータを解析しても消えるものではない。「パニック」で増えた予算をつぎ込んだ調査の結果がどのようになるかは予想できる。
また、中露イランが行ったことに影響工作についての調査研究のほとんどは事例研究であり、社会全体への影響などについて整理、分析されているわけではない。
同様にファクトチェックやリテラシー教育などの対策についても効果は検証されていない。そもそもこの領域の調査研究はきわめて偏っていることもわかっている。過去の調査研究の内容の統計を取ると、圧倒的に多いのはファクトチェックに関するもので、次はリテラシーである。カーネギー国際平和財団が行ったこの調査の結果では、ファクトチェックに関する調査研究の多くは偽情報対策に特別効果があるわけではないという内容が多く、効果がある対策だからたくさん研究されているわけではないのだ。無駄遣いと思うのは私だけではないだろう。
また、調査方法や対象に偏りがあるうえ、行動に影響を与えることを検証したものがほとんどないこともわかっている。多くの調査研究は情報を受け入れることと、信じることまでを調査しており、行動するまでは調査していない。情報を受け入れることや信じることと、行動することの間には大きな隔たりがある。アイルランドの研究者のグループが2016年から2022年の間の公開されたこの領域の論文などを調査して判明した。
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