アメリカはどうでもよい...弾薬の供与停止も「進撃のイスラエル」は止まらない
ニューズウィーク日本版 / 2024年5月15日 17時13分
自身の政治生命を極右勢力に大きく依存しているネタニヤフは、アメリカではなく閣内の極右派の言うことを聞く可能性が高い。
イスラエル軍の侵攻開始後にラファから避難するパレスチナ人(5月9日) MOHAMMED SALEMーREUTERS
──実際に、アメリカはイスラエルに対してどのくらい政治的影響力があるのか。
今この段階で、アメリカはイスラエルへの武器供与を疑問視する姿勢を示すべきだろう。アメリカが、ガザ住民の安全を確保せずにこのようなことをしないようにと具体的に伝えた後に、イスラエルはラファに攻め込んだ。
必ずしもレッドライン(越えてはならない一線)を決める必要はないが、今回のイスラエルの決断が、アメリカからの今後の武器供与に影響するという明確な警告が必要だ。
もう1つの問題は、イスラエルが戦後のガザ統治について、最終的にどうするのかという明確な考えをまだ明らかにしていないことだ。彼らはどのように決着をつけるつもりなのか。
一方で、今回の攻撃の激化が、アメリカの国内世論の分断を深めることは間違いない。それはアメリカにとって、戦争を一刻も早くやめさせようとするさらなる理由だろう。
──アメリカが弾薬の供与を一時停止することは、イスラエルの戦時中の行為に影響を与え得るだろうか。
短期的には戦術などに大きな変化はないだろうが、武器の供与が止まれば、長期的には心理的な影響が出てくるだろう。
イスラエルはアメリカの対外援助の最大の相手国であり、第2次大戦以降、どの国よりも多くの米軍の軍事支援を受けてきた。昨年10月7日にイスラム組織ハマスがイスラエルを攻撃してから今年3月初めまでに、アメリカは100回以上にわたって武器を輸送している。
イスラエルは目下、北部でレバノンの過激派組織ヒズボラとの対立がエスカレートするリスクを高めている。ハマスとの紛争を拡大させずに限定することが、イスラエルの利益になるはずなのだが。
──そう考えると、イスラエルはなぜラファ侵攻にこれほどまでにこだわるのか。
イスラエルでは政治的志向に関係なく、ハマス撲滅のためには、ラファに侵攻して終わらせなければならないという意識がある。問題は「終わらせる」という意味が、正確には分からないことだ。
私たち国家安全保障に携わる者の大半は、イスラエルがハマスを完全に根絶することは不可能だと考えている。
昨年10月以前は、ハマスの統治はお粗末で、ガザでは決して支持は高くなかった。しかし、イスラエルの攻撃により、特にヨルダン川西岸でハマスの支持が高まっている。
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