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「現代のネロ帝」...モディの圧力でインドのジャーナリズムは風前の灯火に

ニューズウィーク日本版 / 2024年5月23日 14時45分

当時同州の首相だったモディがイスラム教徒の虐殺に遺憾の意を示さなかった理由を問い、蛮行に目をつぶった彼を最高裁判所が「現代のネロ皇帝」と呼んだことに触れた。するとモディは、全国放送のインタビューを4分で打ち切った。

この一件の余波をタパルは回想録につづっている。14年の総選挙を前に首相候補のモディにメディア対応を学ばせようと、参謀はこのインタビュー映像を30回も見せたという。そして、モディの首相就任と同時に与党インド人民党(BJP)はタパルを冷遇するようになった。

インド最大の富豪アンバニ(写真右)と抱擁を交わすモディ首相(11年1月) AMIT DAVEーREUTERS

政府の失態は基本的にスルー

モディが会見を開き、記者に質問の機会を与えたことは一度もない。国民に語りかけるときは、SNSや自身のラジオ番組『マン・キ・バート(心からの会話)』を使う。インド経営大学院ロータク校が昨年実施した調査によれば、番組には2億3000万人のリスナーがいる。

メディアにはモディに迎合する下地があった。インドでは媒体の多くが、政府の機嫌取りに腐心する企業や政府の広告に支えられている。

この傾向がますます顕著になっているのがテレビだ。インド一の資産家ムケシュ・アンバニは、インド版のCNBCやCNNを運営するメディア大手「ネットワーク18」を所有する。

モディに近いとされる富豪ゴータム・アダニは昨年正式に、モディのヒンドゥー至上主義に屈しない唯一のニュース専門局とされていたNDTVの支配株主となった。

モディ政権は特に電気通信分野でアンバニに便宜を図ったとして批判されている。不正取引を疑われたアダニを擁護したと非難されたこともある。現在彼らのメディアは、おおむね政府と歩調を合わせている。

こうした主流メディアは政府の失態をまともに取り上げない。例えば専門家がインドは中国との国境紛争で領土を奪われたと指摘しても政権は否定し、大半のメディアがその言い分を無条件で支持する。

20年6月にはインドの兵士20人が武力衝突で死亡したが、ニュース専門局アージ・タクのキャスター、スウェタ・シンは「国境を守るのは政府ではなく軍隊の務めだ」と言い放った。

昨年アメリカの投資調査会社ヒンデンバーグ・リサーチがアダニ・グループの「恥知らずな株価操作と不正会計」を糾弾した際も、テレビはアダニと政権の癒着を追及するどころか、彼を擁護した。

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