「現代のネロ帝」...モディの圧力でインドのジャーナリズムは風前の灯火に
ニューズウィーク日本版 / 2024年5月23日 14時45分
この協議から生まれた「行動指針」の1つは、迅速な対応ができるように「政府の信用を落とすネガティブなインフルエンサー」を常に監視するというものだった。
政府の「フェイクニュース」の定義は、本来の語義とは正反対に見える。報告書からは、信頼性の高いオルトニュースなどのニュースサイトを抑え込み、ジャーナリズムを装った政府寄りの宗教団体系プロパガンダサイトのオプインディアを後押ししたい意向が感じられる。
政府の報道情報局も19年にファクトチェック部門を設立した。表向きの目的は政府の政策に関するフェイクニュースの規制だが、実際には政府に批判的な報道を根拠も示さずに否定するケースが目立つ。
新しい農業法に抗議する農民のデモ隊(20年12月、ムンバイ) IMTIYAZ SHAIKHーANADOLU AGENCY/GETTY IMAGES
ジャーナリストの役割に対する政府の考えは、一般市民にも浸透しているようだ。独立系ジャーナリストは自分の仕事をするだけで、しばしば「反国家的」などのレッテルを貼られ、非難にさらされる。
特に2期目のモディ政権では、ジャーナリストに対する市民の自警団的攻撃が見られるようになった。宗教対立を取材するジャーナリストが、怒った暴徒に脅されたり殴られたりした例が少なくとも数件ある。
アダニの件を報道したジャーナリストのパランジョイ・グハ・タクルタは、モディは政府批判を歓迎する発言を何度かしているが、「やっていることは正反対」だとフォーリン・ポリシー誌に語った。
国境なき記者団が発表する報道の自由度ランキングで、インドの順位は14年~24年の間に140位から159位に後退した。
政府はどうすれば順位を上げられるかを検討する委員会を20年に立ち上げたが、インドの順位は「現地の実情に即しておらず」、「欧米の偏見」の産物というのが同委員会の結論だった。「モディと支持者のこの態度は、インドにとって良くないと私は考える」と、タクルタは付け加えた。
ジャーナリズムは存続の危機
私がジャーナリストとしてのキャリアをスタートさせた約6年前と比べても、仕事をすることで狙われる可能性が高まっていると感じる。キャラバンの同僚が殴られた事件が2度あり、1度は警察にだった。
21年初めには農業法に対する大規模な抗議デモを積極的に報道した後、キャラバンのツイッターアカウントが数時間アクセス不可になり、同僚の編集者は他のインド人ジャーナリストと共に扇動罪で告発された。
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