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「人間の密輸」に手を染める10代がアメリカで急増...SNSで犯罪組織に応募

ニューズウィーク日本版 / 2024年5月30日 14時0分

メキシコとの国境に近いアリゾナ州南東部のコーチス郡は、昔から密入国の舞台になってきた。国境付近の町で密入国は目新しい現象ではないと、同郡のマーク・ダネルズ保安官は本誌に語る。

「この3年間とそれ以前の違いは、規模の大きさだ。今(密入国の)件数は史上最悪の水準に膨れ上がっている。しかも対策は取られていないし、対策を講じようという姿勢も見られない」

メキシコとの国境付近でテキサス州の「ローンスター作戦」により拘束されたグループ(21年3月) JOHN MOORE/GETTY IMAGES

全米の保安官たちは、国境の密入国問題についてジョー・バイデン大統領と政権上層部に直接伝える機会を求めてきた。ところが、ホワイトハウスはいまだに、保安官たちを招いて意見を聞いていないという。バイデンは、アメリカ現代史上初めて国境警備についての対話に臨もうとしない大統領だと、ダネルズは批判する。

「本腰を入れて一致結束した対策とメッセージを打ち出し、法律の執行を徹底し、未成年者に大きな影響を及ぼすソーシャルメディアの問題に対処しない限り」問題は続くだろうと、ダネルズは言う。

大がかりなネットワーク

コーチス郡のブライアン・マッキンタイア検事が本誌に示したデータによれば、同郡検察が昨年1~11月(集計済みの最新データ)に密入国関連の容疑で訴追した未成年者は33人。そのうち20人が成人として扱われた。22年も1年間で49人が訴追されている(38人が成人扱い)。

「ほかの地域から犯罪者がたくさん集まってくる」と、マッキンタイアは言う。「犯罪者の観光名所のようになってしまった。メーン州、オレゴン州、(イリノイ州の)シカゴなど、ありとあらゆる場所からやって来る」

本誌の取材に応じた多くの法執行機関関係者と同様、マッキンタイアは、若い世代が密入国に関わるケースが急増している要因として、ソーシャルメディアを挙げる。画像・動画投稿アプリの「スナップチャット」などのソーシャルメディアで流れてくる広告の影響が大きいというのだ。

ある広告では大量の札束の画像を映し出し、アリゾナ州のダグラスやシエラビスタなど所定の場所まで密入国者を運べば、簡単にその金が手に入るとうたっている。

「密入国者1人をできるだけ早く、途中で捕まらずに(アリゾナ州の)フェニックスまで車で運ぶことに成功した場合、1500ドルのカネを受け取れると言われれば、そのリスクをいとわない人は多い」と、マッキンタイアは指摘する。

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