「人間の密輸」に手を染める10代がアメリカで急増...SNSで犯罪組織に応募
ニューズウィーク日本版 / 2024年5月30日 14時0分
密入国ビジネスを手がける犯罪組織は、密入国しようとする人から1人当たり6000~8000ドル(メキシコから入国する場合)の料金を徴収する。密入国者は料金の一部を前払いし、残りは借金として背負い、アメリカ入国後に返済する。その結果として、密入国者は「年季奉公人」のような状態に置かれると、マッキンタイアは言う。
フェニックスの地元テレビ局KTVK/KPHOによると、昨年11月には、同州ギルバート出身の18歳とメサ出身の19歳が身柄を拘束された。容疑は、5人の人物の密入国を助けたことだ。
同じフェニックスの地元メディアの12ニュースによると、今年3月にもコーチス郡で15歳、16歳、18歳の3人が密入国に関与した容疑で逮捕されている。
共和党関係者の視察に同行するダネルズ保安官(左から3人目) KEVIN DIETSCH/GETTY IMAGES
手っ取り早く稼げる誘惑
アリゾナ州の国土安全保障調査部(HSI)のレイ・リード特別捜査官補は、トゥーソン都市圏の作戦を監督している。リードが国土安全保障省に入った08年当時、密入国は身内によるものだった。基本的には幼なじみや親族の知り合いを頼って集まったグループが、頭領が指揮を執る大きな密入国ビジネスに参加していた。
それが近年は、密入国を取り仕切る国際犯罪組織のスキームは協同組合のように運営され、個人が密輸サービスを提供する。
「彼らは連絡を取り合うが、必ずしも直接、会うわけではない......信頼できる知り合いや幼なじみのネットワークには頼らなくなった」と、リードは言う。「(取り締まる側にとって)難しいのは、世界中で誰でもこうした組織のメンバーになれるが、ほかのメンバーには会わないということだ。彼らは基本的に、広告に応募して、広告の掲載者とオンラインでやりとりするだけだ」
さらに犯罪組織は、ソーシャルメディアや暗号化されたアプリが「匿名であるという偽りの感覚」に付け込み、応募する人々を利用して搾取する方法を見つける。
アリゾナ州南部では、密入国者を運ぶ運転手の募集や、それより数は少ないが違法薬物の販売など、あらゆる類いの広告がソーシャルメディアにあふれているとリードは言う。「こうした広告に応募する人は、手っ取り早くカネを稼ぎたいだけだ。組織側は基本的に、自分たちの広告は法執行機関にバレないと言って指示を出す」
「応募者の身元は調べない。組織は存在を明かすというリスクはあるが、匿名性を利用して個人をリクルートできる。そして、法執行機関は自分たちのやりとりを見ることはできないと説明する」
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