元福島原発作業員、起業家、ピカチュウ姿のボランティア...戦火のウクライナで生き抜く日本人たちの実話
ニューズウィーク日本版 / 2024年6月6日 17時0分
小峯 弘四郎(フォトジャーナリスト)
<異国の戦場で日本人が見た現実...ウクライナに留まる彼らの姿を追う>
最初にウクライナを訪れたのは、戦争が始まった直後の2022年4月だった。その後、この2年余りの間に計5回ウクライナとその周辺国に行き、戦争の最前線である東部地域をメインに、そこに暮らすウクライナの人々やボランティア、兵士などの取材を続けてきた。
初めてウクライナを訪れた時は、現地の状況がほとんど分からず、取材のコネもなかった。それでもあえて戦場となっている国に飛び込んだのは、SNSで多くの情報が発信されているとはいえ、実際に現地に行ってみないと分からないという思いが強かったからだ。
1回目の入国では、ポーランドからバスで西部リビウに着いた翌日、ミサイルが駅周辺に落ちた。すぐに現場に駆け付けようとすると、その場で警察官に職務質問をされてそのまま警察署に連行された。リビウへのミサイル攻撃は珍しいため警戒を強めていて、一般人がSNSに写真や動画を投稿するのも取り締まっているという。
ウクライナの全体状況を把握した後、友人の香港人カメラマンが東部ハルキウ(ハリコフ)にいると知り、直接現地に行って、取材の手法や同行が可能かどうか聞くことにした。
ハルキウに着いて街の状況を確認しようと中心部を撮影して歩いていると、現地住民が不審に思ったのか、突然騒ぎ出して警察を呼んだ。
それまでの1週間程度の滞在で日本と日本人への好意的な雰囲気は感じていた。だから警察が来ても問題ないとタカをくくっていたのだが、身分証の照会や荷物検査が終わると、後ろ手に縛られ顔に袋をかぶせられてからテープでぐるぐる巻きにされ、パトカーに放り込まれた。
その後、警察署に連れて行かれ、身体の拘束を解かれた。英語を話せる若い警官が到着して「住民たちはとてもナーバスになっていて、写真なんか撮っているとスパイだと勘違いされるぞ」と詰問された。解放されたのは拘束から5時間後だった。
最初の1週間で取材したい場所や、取材内容が限定されてしまい、予定変更を余儀なくされた。結局この後はブチャなどキーウ州の郊外の取材をした後、ウクライナ避難民がいる隣国モルドバ、ポーランドを回り、多くの未練だけを残して帰国した。
再度ウクライナへ取材に行こうと思ったのは、4カ月後の22年8月。戦争が始まって半年近くたち、4月の取材で会った人も含め多くの日本人が現地に滞在していた。その人たちにまた行くと連絡してみると、つながりのある人や取材先を紹介してくれた。
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