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保守強硬派の内紛...ライシ大統領死後、イラン大統領選の行方は?

ニューズウィーク日本版 / 2024年6月11日 14時0分

有力な後継者と目されてきたライシ大統領の急死で激化する保守強硬派内の主導権争いに警鐘を鳴らす最高指導者ハメネイ IRANIAN LEADER PRESS OFFICEーANADOLU/GETTY IMAGES

アフシン・シャイ(英キール大学准教授)
<お家芸の派閥抗争に新たな展開、国内外に緊張を抱えるイスラム共和国で「跡目争い」が政情不安に拍車をかける>

イランでは5月19日にイブラヒム・ライシ大統領がヘリコプターの墜落事故で死亡した後、激しい権力闘争が巻き起こっている。

大統領の死後50日以内に後任を選出するという憲法の規定に従い、6月28日に大統領選が実施される。3日に立候補登録が締め切られ、80人が名乗りを上げた。その顔触れは予想どおり、ライシと同じ保守強硬派が多数を占める。

イランの選挙は、イスラム法学者などで構成される護憲評議会の資格審査を経て、正式な候補者が決まる。2020年や今年3月の国会議員選挙では保守強硬派の主導のもと大量の候補者が失格とされ、21年の大統領選でも改革派や保守穏健派が90人以上、排除された。

今回も護憲評議会の資格審査を経て、11日に候補者の最終名簿が発表される。穏健派や改革派の候補者が認められる可能性もあるが、それは、国民の大多数が正当なものと認めていない選挙の投票率を引き上げるためだ。

大統領選の結果はイランの今後を大きく左右する。ライシは21年に大統領に就任する前から、高齢の最高指導者アリ・ハメネイの有力な後継候補と目されてきた。そのライシが死んで、保守強硬派の内部で新たな戦いが始まっている。今回の大統領選は、イランの政治家にとって究極の政治決戦である最高指導者の継承争いにおいて、新たな足がかりを築く戦いなのだ。

この国の派閥抗争は今に始まったことではないが、強硬派同士が政治の主導権争いを繰り広げることは、新たな展開でもある。従来は基本的に強硬派と改革派の対立が中心だった。

過去数十年、改革派が行政府と立法府を掌握していた時期でさえ、強硬派はイランの重要な神権的聖職者の支持を得てきた。13~21年に穏健派のハサン・ロウハニが大統領を務めた時期も、強硬派はかなりの影響力を維持していた。

超保守グループの台頭

そして今、保守強硬派は互いに敵対している。なかでも注目されている一派は、ライシ大統領時代に台頭した「イスラム革命永続戦線(ペイダリ戦線)」で、政府と議会の双方で大きな影響力を振るっている。

超保守的な姿勢で知られるイスラム革命永続戦線は、近年のイランの内政および外交政策の形成に大きな力を発揮してきた。しかし、その支配に反発する他の強硬派と、厳しい対立が続いている。

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