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【米中覇権争い】アメリカの「戦略的要衝」カリブ海でも高まる中国の影響力、「キューバ危機」の再来も!?

ニューズウィーク日本版 / 2024年6月14日 13時26分

彼は今年1月に中国を1週間かけて訪問した。滞在中に首都北京で大使館を開設(国交は1983年からある)し、少なくとも9つの覚書を交わした。中国の船舶と船員に航行の自由を認めること、ガバナンスに関する習近平思想をアンティグア・バーブーダ政府の関係者が学ぶこと、などが含まれている。

アンティグア・バーブーダのガストン・ブラウン首相と中国の習近平国家主席(今年1月、北京) OFFICE OF THE PRIME MINISTER OF ANTIGUA & BARBUDA

情報活動の拠点を兼ねるか

中国は口だけでなく金も出す。だから「頼れる貸し手」であり、金利は2%で5年間の返済猶予もあるとブラウンは本誌に語った。アンティグア・バーブーダは2018年にカリブ海諸国の先陣を切って中国の「一帯一路」構想に参加している。

この地域にいる欧州・アジア諸国の外交官の見立てでは、中国の関心は経済的なものに限らない。新しい大使館は規模と厳重な警備ゆえに「要塞」と呼ばれているが、スパイ活動の拠点である可能性も高い。

米政府によると、中国はキューバにも同様の拠点を設けているが、キューバでは米政府の監視が厳しい。だからアンティグアを新たな拠点ないし後方基地と位置付けたらしい。

米南方軍司令部の広報担当はこう述べた。「中国がカリブ海地域で進めている物流インフラへの投資を見ると、国有企業や現地の中国人に軍事目的の諜報活動をさせている可能性がある。中国共産党には公務員を標的に勧誘や贈賄の慣行があるので、なおさら憂慮される」

過去にアメリカは南北米大陸で覇権を確保していた。

19世紀にはモンロー主義を掲げ、外国による政治介入を潜在的な敵対行為と見なした。1962年のキューバ危機ではソ連による核兵器配備に猛反対し、世界は核戦争の瀬戸際に立たされた。83年には米軍がグレナダに侵攻して親ソ政権を倒した。

もともと英領で奴隷制度があったアンティグアでは、中国の影響力拡大に不安を覚える人もいる。今はチャールズ英国王を国家元首としているが、共和制への移行を問う国民投票が計画されてもいる。

野党・統一進歩党のジゼル・アイザック議長は首都郊外の自宅でこう語った。「この国は中国に主権を売り渡した。そう思っている人はたくさんいる。中国は超大国として、もっと戦略的要衝を手に入れたいのだろう」。

中国企業が建設したセントジョンズの港湾を利用するような人たちは、中国との関係について多くを語ろうとしないそうだ。「要するに、弱みを握られているからだ。下手に口を滑らせれば自分の身に危険が及ぶ」

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