【米中覇権争い】アメリカの「戦略的要衝」カリブ海でも高まる中国の影響力、「キューバ危機」の再来も!?
ニューズウィーク日本版 / 2024年6月14日 13時26分
同党の議員で、ラジオ番組の司会者でもあるアルジャーノン・ワッツも同様な懸念を表明し、「カリブ海ではお金が王様だ」と言った。
セントジョンズに中国が建設した商業用海運港 DIDI KIRSTEN TATLOW
借金漬けになる「一帯一路」
本誌はアンティグア・バーブーダ財務省に具体的な数字を問い合わせたが、返答はなかった。
だが資料によると、22年までの中国からの融資額は1億7600万ドルで、その後も増えている(メルフォード・ニコラス情報相が本誌に語ったところでは、北京で合意された水道管更新事業でも約6000万ドルの融資が約束された)。
この国の国民1人当たりGDPは年1万9300ドル程度だが、中国からの借金は1人当たり2400ドル以上という計算になる。
中国は「一帯一路」構想で世界中にプレゼンスを広げてきたが、相手国を借金漬けにして植民地化しているに等しいとの批判がある。いい例がアジアのラオスやスリランカ、さらにアフリカ諸国などだ。中国は、いずれも「ウィンウィン」の協力関係だと反論しているが。
カリブ海諸国における中国のプレゼンス拡大は、アメリカにとって厄介な事態である。
「大胆な動きだ。カリブ海はアメリカにとって戦略的に重要な地域だ」と言ったのは、カンタベリー大学(ニュージーランド)のアンマリー・ブレイディ教授(国際関係学)。
中国は他の地域でも同じように小さな島国を取り込み、習はロシアのウラジーミル・プーチン大統領とも巧みに連携し、「毛沢東とスターリンが果たせなかった夢」の実現に向かっている。
米南方軍司令部によると、過去5年間に中国は東カリブ海での外交で「大成功」を収めている。「西半球での商業活動を可能にするため、東カリブ海に大規模な物流拠点を求めているのだろう」
アメリカ人なら、カリブ海といえば白い砂浜と青い海、新婚旅行、ラム酒、スパイシーなジャークチキンを連想するかもしれない。だが中国はもっと大きな価値を見いだしているのだと、ペンシルベニア州カーライルにある米陸軍大学校戦略研究所でラテンアメリカを担当するエバン・エリス教授は言う。
「中国はカリブ海を戦略の要衝と見なし、過度にアメリカに警戒させることなく支配力を広げたいと考えている」と、エリスは本誌に語った。ドミニカ、グレナダ、バルバドス、そして「ある程度は」ジャマイカにまで友好の輪を広げているという。
もちろん「アメリカも注視してはいるが、首都ワシントンで警報が鳴るほどではない。少しずつ、目立たぬように影響力を増しているからだ」
この記事に関連するニュース
-
日本への「警戒」と「重視」が共存する中国。対日スタンスの緩和はあるか
トウシル / 2024年6月13日 7時30分
-
アメリカにほど近いカリブ海のリゾート地やニューヨークの中心で影響力工作を拡大する中国の深謀遠慮に迫る『姿なき侵略者 中国』ニューズウィーク日本版6/18号は好評発売中!
PR TIMES / 2024年6月12日 17時40分
-
歯止めの効かない中国の「不動産倒産連鎖」についに政府が「救う会社、救わない会社リスト」を作成…これから中国経済が直面する“失われた30年”
集英社オンライン / 2024年6月12日 8時0分
-
中国が欧米パイロットを引き抜き、ファイブアイズが警告
ニューズウィーク日本版 / 2024年6月10日 13時0分
-
ペルー大統領が今月訪中、習主席と会談 港湾などの企業幹部とも
ロイター / 2024年6月6日 11時11分
ランキング
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください