「放火魔消防士」との声も...解散ギャンブルに踏み切ったマクロンの真意とは?
ニューズウィーク日本版 / 2024年6月19日 13時39分
昨年2月、フランス全土に広がった年金改革に抗議するデモ SYLVAIN LEFEVRE/GETTY IMAGES
68年5月、フランスでは全土で労働者のストライキや学生の抗議運動が続き、大統領の政治生命、ひいては第5共和制の存続も危ぶまれていた。
そこでドゴールは異例の演説で国民議会の解散を宣言し、「わが共和国は屈服しない」と豪語した(実際には当時の首相ジョルジュ・ポンピドゥーがドゴールに直談判し、解散しなければ自分が辞めると脅したらしい)。
結局、ドゴールは大勝負に勝った。フランスの有権者はドゴールの与党に安定多数を与えた。だが同じ賭けに出た他の大統領たちは、そこまで幸運ではなかった。
再びの「コアビタシオン」
97年のジャック・シラクは大統領就任2年目に解散総選挙に打って出て国民を驚かせた。彼は「もう一度、国民の声を聞きたい」と言い、中道右派の議席の上積みを狙った。
しかし国民の声は左派を支持し、社会党のリオネル・ジョスパンが首相となり、シラクは彼と権力を分け合うことになった。いわゆるコアビタシオン(同棲、大統領と首相を異なる党が分け合う状態)である。
アメリカの民主党が何かの魔法に期待し、有権者は今度も消去法でジョー・バイデンを選ぶだろうと信じているように、マクロン陣営も総選挙の投票(1回目は6月30日、決選投票は7月7日)では与党が勝つと思い込んでいる。
マクロン自身、今度の投票は国民が「責任を果たす」機会だと述べている。与党・再生の副代表セシル・リアックに言わせれば、マクロンが投げかけた問いはただ1つ、「あなた方は本当に国民連合による統治を望むのか?」だ。
リアックの言葉には一理ありそうだ。そもそも欧州議会の選挙は、有権者が特定の候補を選ぶというより、世の中への不満を表明する機会となっている。
政治学者のノンナ・メイヤーに言わせれば、欧州議会選は政治家に警告を突き付ける「制裁投票」のようなものだ。
しかも欧州議会選の投票率は国政選挙に比べて格段に低い。フランスに限れば、6月9日の欧州議会選で投票したのは有権者の半数ほどだ。だから統計的にも、あれが今度の総選挙の結果に直結するとは言い難い。
しかし、もしもフランス国民が国民連合による統治を「本当に望んで」いたらどうなるか。その場合も、権力の掌握が国民連合にとって有利か不利かは微妙な問題だ。
マクロン自身、国民連合が議会を制するケースを想定して、コアビタシオンの再現に備えているかもしれない。
この記事に関連するニュース
-
仏極右ルペン氏、政権に退陣要求も 生活費高騰に予算対応なしなら
ロイター / 2024年11月21日 10時56分
-
スリランカ議会選 大統領派が3議席から過半数に躍進、「債務の罠」からの脱皮目指す
産経ニュース / 2024年11月15日 16時12分
-
トランプ氏との関係構築「安倍首相に学べ」 G7で後継者の有力候補はメローニ伊首相?
産経ニュース / 2024年11月11日 11時4分
-
フランスのマクロン大統領がトランプ氏に祝意表明、欧州は転換期にとの見方も(フランス、米国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年11月8日 15時15分
-
日本のGDPを抜いたドイツの「実は厳しい」現実...連立政権は崩壊へ、ショルツ首相が財務相を解任の衝撃
ニューズウィーク日本版 / 2024年11月7日 19時45分
ランキング
-
1軍事費「増額続ける」=トランプ氏に配慮―前台湾総統
時事通信 / 2024年11月24日 15時29分
-
2韓国政府、佐渡で25日に独自追悼行事開催
共同通信 / 2024年11月24日 16時4分
-
3ガザ全域をイスラエル軍が攻撃、48時間で少なくとも120人死亡…レバノンでは空爆で20人死亡
読売新聞 / 2024年11月24日 18時47分
-
4飲料にメタノール混入か、ラオスで外国人観光客6人が相次ぎ死亡…日本大使館も注意呼びかけ
読売新聞 / 2024年11月24日 15時44分
-
5COP29 途上国支援「年46兆円」で合意 「目標額が少なすぎる」の声も
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年11月24日 11時43分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください