「放火魔消防士」との声も...解散ギャンブルに踏み切ったマクロンの真意とは?
ニューズウィーク日本版 / 2024年6月19日 13時39分
パリ五輪はどうなる
81年の大統領選では左派のフランソワ・ミッテランが勝利して大統領に就任したが、86年の総選挙では保守派が勝ってシラクが首相となった。これがコアビタシオンの始まりだ。
左派のミッテランと中道右派のシラクは政策面でたびたび衝突した。シラクの政策には、フランス国内で生まれた移民の子への自動的国籍付与の廃止や、公立大学の試験を難しくし学費を上げる計画も含まれていた。
これに反発する学生たちは各地で街頭に繰り出して激しい抗議活動を繰り広げたが、このときミッテランは学生たちへの支持を表明。法案撤回を余儀なくされたシラクは人気を失い、88年の大統領選では71歳のミッテランに大敗を喫したのだった。
だが、それは昔の話。今のマクロンは往年のミッテランではない。今のマクロンは、かつて彼を支えた中道左派の有権者から見放されている。
実際、5月の世論調査によれば、欧州議会選で「投票に行く」と答えた有権者の70%近くが、その理由としてマクロンへの反発を挙げていた。
マクロンはかつて、自分をローマ神話のジュピターになぞらえたことがある。
そういう独裁的な体質の持ち主に逆風が強まるのは当然で、今度の総選挙で国民連合が第1党となっても驚くには当たらない。それはまあ、マクロンの身から出たさびだ。
いずれにせよ、パリで夏季オリンピックが始まる頃には結果が出ている。
フランスの共和制と人道主義を体現する存在として世界中のアスリートを迎えるマクロン大統領の隣には、移民嫌いで極右の若武者バルデラが立っているかもしれない。さて、どうなることやら。
From Foreign Policy Magazine
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