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「東と西、南と北の架け橋へ」地政学上の鍵を握るサウジアラビアが目指す「サウジ・ファースト」の論理

ニューズウィーク日本版 / 2024年6月21日 14時33分

東部の都市ダーランの石油精製施設 REZA/GETTY IMAGES

国外からの投資を呼び込み、観光振興キャンペーンを行い、有力なコンサートやスポーツイベントを誘致することも可能になった。今年に入って首都リヤドに酒店がオープンしたり、最近はサウジアラビア史上初めて女性用水着のファッションショーが開催されたりもした。

サウジアラビアとイスラム教超保守派の伝統的な結び付きを思えば、こうした試みにはさまざまなリスクがあるというのがヘイケルとシハビの一致した意見だ。超保守派は「イスラム社会の構成要素としては従来考えられていたよりはるかに小さい」と、シハビは指摘する。

これらのイデオロギー、特に国が支援するワッハーブ主義は長年サウジ王室の正統性の礎となってきたが、イスラム教の最も原理主義的で時に暴力的な解釈は「ビジョン2030」の推進で厳しく抑え付けられてきた。

だがこうした改革は、民主主義や表現の自由など、サウジアラビアの絶対君主制における人権問題でアメリカ側が懸念を示しがちな点について妥協するものではない。

この現状を米政府が今後も容認するかどうかは「アメリカがサウジアラビアとの関係に何を求めるかの問題」だと、ヘイケルは考えている。

「責任あるグローバルな産油国、産油政策によって国際石油市場を均衡させる国を望むなら、サウジアラビアはうってつけだが、人権と価値観を優先するなら、緊張した関係になるだろう」

グローバルな「懸け橋」に?

バイデン政権は「外交的対話を強化し、サウジアラビアを公然と批判することを減らし、地政学的な違いを考慮し、両国の利害の違いに配慮する」とともに「経済・安全保障問題での歩み寄り」によってサウジアラビアとの関係を改善できると、サウジアラビアの著名なジャーナリストで研究者のアブドゥルアジズ・アル・ハミスは感じている。

しかし「アメリカがサウジアラビアとの関係安定化に失敗すれば多くのリスクを招きかねない」と、ハミスは言う。

「国際エネルギー市場の安定に悪影響を及ぼす」ばかりか、「中東におけるアメリカの影響力が低下し、サウジアラビアとの関係強化を狙う中国・ロシアといったライバルの影響力が増す」。

バイデン政権の取り組みが成功しても、サウジアラビアはアメリカの利害と対立しかねない国へのシフトを続けるだろう。ほかの大国との連携強化にはさまざまなメリットがあると、ハミスは指摘する。

同盟を多様化して国際社会でのサウジアラビアの足場を強化し一国依存を減らす、貿易相手・投資先を多様化してサウジ経済を強化する、複数の主要国との関係を強化して地域の「力の均衡(バランス・オブ・パワー)」の確立に寄与するなどだ。

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