イランの核武装への兆候か? イスラエルとの初交戦と大統領墜落死が示すもの
ニューズウィーク日本版 / 2024年6月27日 12時40分
そんな状況が変わりつつあるのかもしれないとアインホーンは指摘する。「いくつかの進展がイランのエリート層の核兵器に対する賛成意見の一部を裏付けてきた」
「彼らはこれまで自国の従来型抑止力と代理勢力からの支援が十分な抑止力になると感じてきた。だが現在は、イランは今年4月の初の直接交戦が示すようにイスラエルから、ひょっとするとアメリカからも直接攻撃されかねない状況にある」
そしてアインホーンは別の見方を示した。「イランは以前は地域戦略がうまくいき、影響力を拡大し、敵を抑止していると感じていたかもしれないが、今ではアメリカがイスラエルや、もしかするとサウジアラビアなど湾岸諸国やエジプトも含めた有志連合を模索しているというものだ。イランと代理勢力に対抗するための連合だ」
だが近年、他の中東の国々の多くはイランとの戦略的競争にもかかわらずイランとの関係改善を選んでいる。アインホーンが注目しているのはイランの核のメッセージのもう1つの効果──他の国々が追随する可能性だ。特にサウジアラビアは核開発強化に興味を示し、エジプトとトルコにもその兆しが見られる。
国連軍縮研究所の元研究員サベットも同様の結論に達した。「イランの核実験強行を受けて他の中東諸国も核兵器国産をより真剣に考えるようになり(欧米の根強い抵抗は必至だが)、国際的な核不拡散体制にとって重大な課題となるはずだ」
「後戻りできないレベル」に
結局、イランの核開発の結果は確立される抑止力次第かもしれないとサベットは言う。
「地域の力の均衡(バランス・オブ・パワー)はイラン有利にシフトするはずだ。イランが今後も存亡の危機──少なくとも外交など他の方法では解決できない深刻な問題──に直面していると信じ続けるなら、敵に対する攻撃はより強く、よりあからさまになるだろう。一方、アメリカと中東の反イラン勢力の一部がイランとの合意を受け入れれば、中東情勢はいくらか安定し、解決困難だった問題が進展する可能性もある」
しかしながら現状の不安定さに追い打ちをかけているのは、アメリカ政府とイラン政府の間に信頼関係が根本的に欠けていることだ。かつて歴史的快挙とたたえられたイラン核合意という外交的打開策に代わって、合意に対する両国政府の強硬派の懐疑的な見方が優勢になった。
オバマ・トランプ両政権の米国家安全保障会議(NSC)核不拡散担当官で、現在はNPOのシンクタンクである核脅威イニシアチブ副代表代理のエリック・ブルーワーは、トランプ政権がイラン核合意から離脱した当時、イランは合意を遵守していたと指摘する。「アメリカの合意離脱を受けて、イラン政府が核開発を拡大したのは当然だ」
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