「地球温暖化を最も恐れているのは中国国民」と欧州機関の意識調査で明らかに...その3つの理由とは?
ニューズウィーク日本版 / 2024年6月28日 18時45分
とすると、この意識調査の結果とは矛盾があるようにもみえる。
しかし、政策レベルでの進展と国民レベルの意識は、本来別のものだ。
中国の一般世論が温暖化に高い関心を示すことには、大きく3つの理由が考えられる。
実際に悪影響が出ているから
第一に、中国で地球温暖化の悪影響が広がっていることだ。
異常な熱波、干ばつ、大雨、洪水など、地球温暖化の影響とみられる異常気象や災害は世界各地で増えていて、それに比例して人的被害はもちろん、建造物やインフラの破壊、農作物の損耗といった経済被害も増えている。中国もその例外ではない。
特に目立つのが洪水だ。中国では河川の氾濫が2011年段階で1カ月あたり6~8回記録されていたが、2022年には130回を超える月さえあった。
また、2023年の夏には各地の気象台で観測史上最高気温を記録し、それに比例して全土で家畜の死亡が相次いだ。
こうした災害による経済損失について、北京大学の研究グループは、現状のペースで増え続ければ2100年までにGDPの4.23%にまで増えると試算している。
とすると、中国ではいわば差し迫った脅威として地球温暖化が認識されやすくても不思議ではない。
党の公式方針だから
第二に、中国政府が「環境的文明」を標榜し、温暖化対策に率先して取り組むと表明していることだ。
中国政府が温暖化対策への貢献をアピールするのは、その生産活動によってCO2排出が加速しており、温暖化による災害の被害が表面化しやすい途上国から資金協力などの要求が出やすくなっていることも関係しているとみられる。
ともあれ、実態としてはともかく、 “温暖化対策を進めるべき” が共産党体制の公認スローガンであることは間違いない。
だとすると、中国国内でそれに否定的な論調は出にくくなり、党の公式方針に沿った意見が表明されやすくなっても不思議はない。
とりわけ、欧州投資銀行という外部の機関が行う意識調査に回答者が警戒することもまた想像に難くない。 “温暖化” 以外の選択肢は “失業” や “健康と医療サービス” など、政府の政策・対策への不満表明につながりかねないものであるからなおさらだ。
もっとも、その傾向は外部の調査に対する回答だけではない。
中国でも近年SNSなどで「そもそも温暖化は中国の生産力を削ろうとする西側メディアの捏造」といった陰謀論が表面化している。
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