「地球温暖化を最も恐れているのは中国国民」と欧州機関の意識調査で明らかに...その3つの理由とは?
ニューズウィーク日本版 / 2024年6月28日 18時45分
しかし、少なくともTVなど政府の統制が強いメディアで “温暖化懐疑論” が出ることはほとんどない。それは自由な報道が認められているがゆえに、電波メディアで温暖化に否定的な論調が表出することも珍しくないアメリカをはじめ欧米各国とは好対照といえる。
経済をブレイクスルーできるから
最後に、温暖化対策とりわけクリーンエネルギー開発が中国経済を復調させると期待されていることだ。
コロナ感染拡大以降、中国経済は一時の勢いが影をひそめ、昨年からは不動産バブル崩壊に端を発する若年失業率の高止まり、海外投資の縮小といったニュースが相次いでいる。
そうしたなか、これまで中国経済を牽引してきた工業製品の輸出にもブレーキがかかっている。
とりわけ鉄鋼製品の販売額はこの数年頭打ちになっている。
その大きな背景には、世界全体のCO2排出量の約10分の1が鉄鋼の生産過程で発生しているといわれるだけに、各国で需要が減退していることがある。
さらに、アメリカなど先進国における輸入関税の引き上げや、これまで中国がインフラ建設を推し進めるなかで鉄鋼製品を売りさばいてきた途上国で、コロナ感染拡大をきっかけに債務危機が表面化してそれまでほど販路を拡大できなくなったことも、これに拍車をかけている。
つまり、従来型工業製品に頼る経済構造で成長し続けることが難しくなっていて、そのなかで将来性のある分野の一つとしてクリーンエネルギーがある。
こうした認識は程度の差はあれ多くの国にあるが、中国ではより強いとみてよい。
実際、欧州投資銀行の調査で「グリーントランジション(環境に配慮した社会への移行)が経済を成長させる」と回答した割合は、中国で67%にのぼり、アメリカ(57%)やヨーロッパ(56%)を上回った。
とすると、経済的スランプが続く限り、中国では温暖化対策への期待がむしろ高まるとみられる。
もっとも、それが温暖化対策に逆行する可能性も否定できない。経済成長を目的化したグリーントランジションは、すでに中国で表面化している電気自動車の過剰生産などを加速させる恐れすらあるからだ。
経済的利益は環境対策のインセンティブとしては重要だろう。しかし、主客が逆転すれば、本来の目的も遠のきやすい。
その行方は定かでないが、生産力が大きいだけに、中国における環境意識が世界の環境対策に大きなインパクトを及ぼすことだけは確かなのである。
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。
※筆者の記事はこちら。
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