能登半島地震から半年、メディアが伝えない被災者たちの悲痛な本音と非情な現実
ニューズウィーク日本版 / 2024年7月1日 10時40分
小暮聡子(本誌記者)
<「テレビは表面的な報道ばかり」「集落は全滅と一緒です」「岸田さんは何をしとる?」過疎高齢化の集落で取り残された被災者の声を聞く>
今年の元日に発生した能登半島地震から半年、被災地以外の地域に暮らす人々の目に能登の現状はどう映っているだろうか。地震直後に3万4000人余りいた石川県の避難者は、旅館などへの2次避難を含めて2394人にまで減った(6月18日時点)。2月からは仮設住宅への入居も順次始まり、金沢などに散り散りになっていた住民がようやく故郷に戻り始めた――。
こうした断片的なニュースは、水も電気もなく命が危険にさらされていた災害直後の状態から考えれば、復旧・復興に向けた一つの真実ではある。だが震度7が観測された輪島市を歩けば、半年もたつのにそこだけ時間が止まったかのような、まるで取り残されたかのような光景が至る所に広がっている。
1月に取材した輪島市を6月上旬に訪れると、焼け焦げた朝市の光景はほぼそのまま、鉄骨にサビが広がり、輪島塗の老舗「五島屋」の7階建てビルは横倒しのまま放置されていた。その周辺には全壊した家屋がいくつも残されている。
変わった点はと言えば、以前は上空をバラバラと音を立てて飛んでいた自衛隊のヘリコプターが姿を消し、町全体が奇妙に静まり返っていたこと。そして、被災者の間に「忘れられていく」ことへの不安と先行きの見えない現状へのストレスが蓄積されていたことだった。
「岸田さんは何をしとる?」
輪島市三井町長沢の自宅内で取材に応じる辻田恵利子。中規模半壊と判定された自宅の中は壁紙が剝がれ落ち、梁がずれて危険な状態に KOSUKE OKAHARA FOR NEWSWEEK JAPAN
「がっかりです、本当に」6月9日、2カ月前に避難先から輪島市三井町長沢に戻ったという辻田恵利子(61)は、「復旧・復興」に程遠い生活に疲れ果てていた。三井町長沢地区は、輪島の市街地から車で15分ほどに位置する50~60戸の集落だ。
中規模半壊と判定された築60年になる彼女の自宅は、とても住める状態ではない。そのため4月9日には夫の政俊(62)と同じ敷地にある息子宅で仮住まいを始めつつ、自宅で散乱した荷物をこつこつと整理してきた。
避難していた中能登の娘の家から輪島に戻ってきたのは、4月末に近隣の仮設住宅に入れると聞いていたからだ。だが最初に完成した長沢地区の仮設住宅には選考に漏れて入居できず、6月6日に入居が始まった2つ目の仮設住宅にも外れた。
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