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能登半島地震から半年、メディアが伝えない被災者たちの悲痛な本音と非情な現実

ニューズウィーク日本版 / 2024年7月1日 10時40分

大西山集落には、かつては踊ったり唄をうたったりという伝統文化を保存する「民謡保存会」という組織があり、祭りとなれば外から人を呼んで、キリコ(燈籠)を担いでもらってごちそうを振る舞った。だが、にぎわいを見せていたのは過去の話。近年は人がどんどんいなくなり、地震前には20戸ほどに減っていた。

それでも住人たちは育てた農作物を分け合い助け合って生活していたが、地震で一変した。震災で商店が一軒もなくなり、生きる糧としていた田んぼも失われてしまったからだ。大谷は「私の部落、もはや人がいないから。地震で全滅ですね。何ひどいこと言うがやって言われるかもしらんけど、全滅と一緒」と語気を強めた。

能登の名勝「白米千枚田」の一部には今年も青々とした苗が植えられていた KOSUKE OKAHARA FOR NEWSWEEK JAPAN

 

「能登らしさ」を救うため

震災から半年がたつ今、輪島市が進めているのは、まずは避難所を解消し、仮設を準備して住民を市外から故郷に戻し、家屋解体やインフラ修復を進めること。こうした復旧の次のステップが、新しい街づくり、すなわち「復興」だ。

復興とは、単に従前の状況に機能回復するだけではなく、長期的展望に基づき地域の総合的な構造を経済面を含めて見直し、新しい街づくりを実現することだ。復旧もままならない被災者にとっては、まだ到底考える余裕のない未来かもしれない。

しかし石川県は、5月20日には「石川県創造的復興プラン(仮称)」と題した108ページにわたる詳細な素案を公表した。もともと過疎高齢化が進む奥能登で被災し、住民が金沢などに離散した今、復興という展望を急ぎ提示しなければ人も経済も戻ってこないと考えたからだろう。

「創造的復興プラン」の冒頭、2ページにわたってつづられた序章「能登らしさ」には、こうある(以下抜粋)。 

能登には、壮大な自然が織りなす類稀な絶景と豊かな生命があります。/能登には、自然と共生する人々の、しなやかで美しい暮らしとなりわいがあります。/能登には、人々が心を激しく燃やし、地域が一つになる祭りがあります。/能登には、おたがいのことを思いやり支えあう、人のつながりがあります。/能登がこれからも能登らしくあり続けるために、いま、私たちは、創造的復興を成し遂げなければなりません。

「まずは足元を見て復旧していかなければならないが、未来を見ないとやっぱり元気が出ない。特に若い人はね。そういうなかで、石川県は本当に美しい理念の復興プランを作ってくれた」と言うのは、創造的復興の在り方を有識者らが議論する石川県の「能登半島地震復旧・復興アドバイザリーボード」の委員を務める金沢大学理事の谷内江昭宏だ。

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