H3ロケット3号機打ち上げ成功、「だいち4号」にかかる防災への期待...「攻めの姿勢」で世界に示した技術力の優位性
ニューズウィーク日本版 / 2024年7月1日 22時10分
一方、同ALOS-4プロジェクトマネージャの有川義久氏は「1点の心配もなく打ち上げられ、(ロケットから分離された後に)オーストラリアとチリで『だいち4号』の信号が受信されて我が子の産声を聞いて一安心している。生まれたばかりなので、だいち4号はこれからだ」と語り、表情を引き締めました。
H3ロケット3号機は、2号機からさらに進化させた機能を持つロケットです。大切な「だいち4号」を搭載しているのに、プロジェクトチームはなぜ成功した2号機と同じ機体を使わなかったのでしょうか。軌道投入に成功した「だいち4号」は、今後、どのような役割を期待されているのでしょうか。概観しましょう。
今回のだいち4号打ち上げを予告したポスター(日付は当初予定していた6月30日に) 筆者撮影
経済産業省宇宙産業室によると、22年時点での世界の宇宙産業の市場規模は約54兆円(1ドル140円で換算)で、4分の1が政府予算、4分の3が民間の衛星サービスや打ち上げ関連ビジネスです。アメリカの金融機関であるモルガン・スタンレーは、2040年までに約3倍の140兆円規模になると見積もっています。
世界の年間ロケット打ち上げ成功回数は、23年にはついに200回を超えました。うち約半数はスペースX社によるものです。一社に一人勝ちさせないために、今後はアメリカ、中国、日本、フランスなどを中心に、信頼性や低コスト、利便性を武器にした衛星打ち上げの受注競争が激化することが予想されます。
H3ロケットの打ち上げコストはH2Aの半分
H3ロケットを一言で表せば、「究極の使い捨て型ロケット(ELV)」です。
近年はスペースXの急成長で、ロケットを回収して再度宇宙に打ち上げることでコスト減を図る「再使用型宇宙往還機(RLV)」に注目が集まっています。しかし、ELVも決して過去の遺物ではありません。長年の技術開発による高い信頼性があり、工夫次第で製造コストも下げることができます。
H3ロケットの前機であるH2Aロケットは24年1月に48号機が打ち上げられ、42回連続で成功、成功率は97.9%と世界的に見ても抜群の信頼性を誇っています。けれど、打ち上げのコストが1回につき約100億円で、スペースXのRLV「ファルコン9」の4900万ドル(23年時点、約74億円)と比べて3割ほど高いことがネックでした。
H3は電子部品の9割に自動車向けのものを使うなどして、打ち上げコストをH2Aの半分の約50億円、発注から打ち上げまでの期間も半減の約1年を目指しています。実現すれば、人工衛星の打ち上げ受注で国際社会で十分に戦えると期待されています。
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