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緊迫するイスラエルとヒズボラの影で、イランが狙う「終わりなき消耗戦」と戦争拡大の危険性

ニューズウィーク日本版 / 2024年7月2日 14時21分

国連本部前でもイスラエルへの抗議活動が SELCUK ACARーANADOLU/GETTY IMAGES

マイケル・ベンガード(ロンドン大学シティ校教授〔経済学〕)
<イスラエルは10万の戦闘員を擁するヒズボラとの全面戦争へ。ヒズボラはイランの代理勢力とされ、その影響はガザ戦争の比ではない>

ガザ戦争は最終局面に近づいている──イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相はそう言った。

現にイスラエル軍の一部はパレスチナ自治区ガザから北の隣国レバノン国境へと移動している。レバノンにいるイスラム教シーア派組織ヒズボラとの緊張が危険なまでに高まっているからだ。

昨年10月にガザ戦争が始まって以来、イスラエル北部の住民はレバノン南部を拠点とするヒズボラからの絶え間ないロケット弾攻撃を浴びてきた。

既に6万1000人以上が住む家を追われ、死者は少なくとも28人。数え切れないほどの建物が破壊され、果樹園や森林の多くも焼け野原と化している。

レバノン国境付近に暮らすイスラエル人は、毎日のように防空壕への避難を繰り返している。政府は既に120基以上の移動式シェルターを配置しているが、現地からの報道によれば、さらに50基が運び込まれたという。

ガザのハマスとレバノンのヒズボラ。どちらもイスラム原理主義を掲げる組織だが、その実態は大きく異なる。ハマスはイスラム教スンニ派に属するが実利優先の組織で、少なくとも2011年に内戦が始まるまではシリアのシーア派系アラウィ派の政権と連携していたし、今もシーア派の領袖であるイランの全面的な支援を受けている。

イランも実利優先だから、イスラエルと戦うハマスには喜んで武器や訓練を提供する。ただしハマスを直接的に支配する立場にはない。

一方のヒズボラはイランの代理勢力であり、実質的にはイラン革命防衛隊の下部組織だ。ヒズボラの最高指導者ハッサン・ナスララはレバント(中東の地中海東部沿岸地方の名称)における事実上のイラン総領事と言っていい。

ヒズボラはレバノンの有力政党でもあり、民兵組織としては10万の戦闘員を擁し、同国の正規軍をしのぐ存在だ。

目標は打倒イスラエル

イランの最高指導者アリ・ハメネイはイスラエルへの反感をあおる OFFICE OF THE IRANIAN SUPREME LEADERーAP/AFLO

ヒズボラの背後には常にイランがいる。そのイラン(ペルシャ人の国だ)が目指すのは中東からアメリカを追い出し、近隣の土地をアラブ人から奪い返すこと。

2003年にアメリカがイラクの少数派スンニ派政権を倒したときは、権力の空白に乗じてシーア派の民兵組織を動かし、イラクにイラン寄りの政権を樹立させている。

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