「ナチス軍帽」写真流出で極右候補が選挙撤退...それでも苦戦するマクロン、やはり「無謀な賭け」は失敗に終わる?
ニューズウィーク日本版 / 2024年7月5日 16時50分
六辻彰二
<ナチス時代のドイツ空軍の帽子を被った過去の写真が流出したことで、極右系候補ルディヴィーヌ・ダウディが議会選挙から撤退することに。この一件は、国民連合にある排外主義、外国人嫌悪の気風を改めて浮き彫りにしたが...>
・フランス議会選挙に立候補していた極右系候補が、ナチスの軍帽姿の写真が流出して選挙撤退に追い込まれた。
・そうしたスキャンダルがある極右政党に対してもマクロン陣営は苦戦しているが、そこまで追い詰められたのはマクロン自身の責任もある。
・そもそも今回マクロンが議会の解散・総選挙に踏み切ったのは、極右への警戒の高まりを政権基盤の強化のために利用したとみられているからである。
改めて浮き彫りになった極右の思想性
フランスでは7月3日、ルディヴィーヌ・ダウディ候補が7日に実施予定の議会選挙から撤退した。ナチス時代のドイツ空軍の帽子を被った過去の写真が流出した結果だった。
【写真】ナチス時代のドイツ空軍の帽子を被ったダウディ候補
ダウディ候補は極右政党 “国民連合” に所属しており、北西部カルバドスの選挙区から立候補している。
フランス議会選挙は2回投票制で、第1ラウンドで選挙区の過半数の票を獲得する候補が出なければ、上位2名によって第2ラウンドが行われる。ただし、第1ラウンドの得票率が12.5%を上回った候補にも決選投票進出の権利が与えられる。
ダウディ候補は6月30日に行われた議会選挙第1ラウンドで3位だったが、19.5%の票を獲得していたため、第2ラウンドに進出予定だった。
国民連合はダウディ候補の立候補を取り消したが、除名といった懲罰の対象にするかは触れていない。
移民・外国人の権利制限を主張する国民連合は、これまでも “差別的” といった批判にさらされてきた。そのため最近では “ネオナチ” のイメージ払拭に努めている。
とはいえ、ダウディ候補の一件は国民連合にある排外主義、外国人嫌悪の気風を改めて浮き彫りにした。
マクロンの “無謀なギャンブル”
しかし、ここでの問題はむしろ、その国民連合が権力の座に近づいていることだ。6月30日の第1ラウンドで国民連合は33.2%以上を獲得し、暫定一位になった。
国民連合が議会第一党になったのは、1972年にその前身 “国民戦線” が発足して以来、初めてだ。
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