「ナチス軍帽」写真流出で極右候補が選挙撤退...それでも苦戦するマクロン、やはり「無謀な賭け」は失敗に終わる?
ニューズウィーク日本版 / 2024年7月5日 16時50分
マクロン大統領が所属する中道右派連合 “アンサンブル” と、左派連合 “新人民戦線” はそれぞれ21%、28.1%にとどまった。
つまり、国民連合がこのまま第2ラウンドでも有利に選挙戦を展開すれば、議会第一党になる公算も高い。その場合、同党のジョルダン・バルデラ党首が弱冠28歳で首相になることがほぼ確実である。
フランスでは大統領に首相の任命権があるものの、首相は議会過半数の支持によって指名される。議会に指名された首相を大統領が拒絶することは基本的にできない。それが政治の空転を呼ぶからだ。
そしてその場合、大統領より首相の方が、影響力が強くなる。現在のフランス第五共和制憲法では、大統領には非常事態の宣言や宣戦布告、議会解散などの権限があるものの、日常的な行政権は首相に委ねられている。
要するに、国民連合が議会第一党になれば、マクロン大統領は手足を縛られたのも同じになる。
ただし、ここまで追い詰められたのにはマクロン自身にも責任がある。もともとこの議会選挙は、マクロンの “無謀な賭け” とも呼ばれていたからだ。
マクロンの賭けとは
マクロンの賭けとは何か。一言でいえば、支持率低迷を逆転する手段として、極右台頭で高まる危機感を利用して議会解散・総選挙に打って出たという意味だ。
そもそもマクロンが6月9日、議会解散・総選挙を発表したきっかけは、同日行われた欧州議会選挙で、各国の極右政党がそれまでになく議席を増やしたことだった。
極右台頭に各国政府は危機感を強めている。マクロンは議会解散にあたって「誰が多数派かを明らかにする」と主張し、極右の勢いを止めるためと強調した。
他のヨーロッパ諸国の首脳と比べてもマクロンが極右台頭に神経を尖らせることは不思議でない。過去2回の大統領選挙でマクロンは、国民連合のルペン候補と一騎討ちを演じてきたからだ。
しかし、マクロンの決定はいわば過剰反応とも呼べるものだった。躍進したとはいえ、欧州議会に占める極右政党の議席は全体の20%程度にとどまるからだ。
マクロンは墓穴を掘るか
だからこそ、解散・総選挙という選択は多くの欧米メディアで驚きをもって迎えられ、そのなかで「マクロンが極右台頭をむしろ利用している」という観測も当初からあった。
仏紙ルモンドは解散の直後、政権関係者の話として、マクロンは欧州議会選挙投票日の数週間前から解散・総選挙を計画していたと報じた。
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